奉教人の死 朗読
芥川龍之介の「奉教人の死」は僕の去年からの新しい『僕だけの/僕にしか出来ない』ライフ・ワークだったのだ……そのために僕は相応に覚悟の努力重ねてきたつもりだ……自慰的自己満足の朗読なんかじゃあ、ないんだ……しかし今日、最後の(恐らく教師としての)その朗読をすることとなった……数人の生徒が聴いてくれていたのが嬉しい(それは紙をめくる音で分かったよ)……でもね……僕はこれを母一人を相手に、したかったのだ……それが僕の確かな仕事だったはずだった……それだけが……確かに僕の……たった一回こっきりの……悔いのない朗読になったはずだったのに……僕は母に……母だけに……この僕にしか出来ない……そうだ! はっきり言おう! これはね! 僕の! 僕だけのオリジナルの! 『確かな』特別な朗読なのだ! 誰にも させない 真似出来ない――僕だけの――「奉教人の死」――それを……語りたかったのに……な……母さん……母さん……この僕の朗読を聴いてもらえなかったのは……僕には……心底、残念なんだ、母さん……