鈴木しづ子 三十五歳 『樹海』昭和三十(一九五五)年十月号しづ子詐称投句全掲載句
足凍てし嬰兒は涕くにこゑもたず
一冬の枯藻みかへることもなし
雨おち來簷したかこふ竿の衣
對ふ屋に雨吹きつくる竹葉かな
三句目「衣」は「きぬ」と読むのであろう。どの句も盤石にして佳品である。しづ子の俳句の基本は、昔々のとっくのとう、とっくのとうの大昔に――出来ていたのだ。
それにしても、ずっと不審なのだが――失踪以前の大量投句稿の句でさえ発表形と原稿に殆んど全く変化がないのは何故だろう? 師匠の朱が全くと言っていい程入っていないのはどうしてだろう? 僕も「層雲」にいた頃にやられて憤慨した経験があるが、俳句結社では元の句が想像出来ない程、朱を入れる師匠が多いのに、だ――
ついでに失礼乍ら――彼女が師と慕った巨湫の――彼の、人口に膾炙した代表句を四句挙げろ――と言われて挙げられる人間が、今、何人いるんだろう?
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