亡くしたものは……
先日の佐渡島で、僕は僕が唯一自分で選んで買った――僕の身に着けているものは悉く母か妻が買ったものなのだが――正にアランのイニシュマーン島で買ったマフラーを――亡くした――
僕が人生で亡くしたものは――一体、何だったのだろう……
亡くしたものより――得たものの方が――ずっとずっと多いのに――僕らはいつも――亡くしたものしか考えず、そして、亡くしたことをただただ哀しむという――芥川龍之介が「枯野抄」で解剖したような――愚かな生きものなのかも――知れないね……
ともかく――これで一つの終わりは――否応なく――やって来る――
では諸君――まずは、随分、御機嫌よう――
――そして――
また――何時か――何處かで……