生査子 歐陽脩
生査子 歐陽脩
去年元夜時
花市燈如畫
月上柳梢頭
人約黃昏後
今年元夜時
月與燈依舊
不見去年人
淚滿春衫袖
〇やぶちゃん訓読
去年(こぞ) 元夜の時
花市(くわいち)の燈(とう) 畫のごと
月は上(のぼ)れり 柳梢頭(りうせうとう)
人は約す 黃昏後(こうこんご)
今年 元夜の時
月と燈と 舊に依るも
去年(こぞ)の人には見(あ)へずして
淚 滿つ 春衫(しゆんさん)の袖(しう)
〇やぶちゃん文語定型訳
去年(こぞ)元宵(げんせう)の夜(よ)の記憶(おもひ)
花市(はないち)燈(ともしび)燦爛(さんらん)と
柳樹(りうじゆ)が梢(こずゑ)に月登り
女(ひと)と約せし――宵の闇――
一年(ひととせ)經(へ)ぬる元宵の
月影(ひかり)と燈(ひ)とはそのままに
遂(つひ)に逢はざる去年(こぞ)の女(ひと)
春爛漫の――濡れし袖――
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題名の「生査子」(「せいざし」と読む)は宋詞の調べ(詞牌という)の一名称(詞の内容とは無関係)。なお、二連目の最終句は「淚濕春衫袖」とも。