耳嚢 巻之四 老狐名言の事
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本日昼間には380000を突破するものと思われる。
本日の昼は、我が尊敬する師(数学者にして哲学者)と逢うこととなっており、恐らくは突破のリアル・タイムには立ち逢えぬが――
既に記念テクストは、転送すれば一瞬で公開完了可能なように、用意万端整って御座る。
乞うご期待。
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老狐名言の事
右の彌二部狐也けるか、又は外の老狐爲りけるや。人に古き事などかたりて、人の爲(ため)をなしけることなど咄しけるに、或人後老狐に向ひて、畜類ながらも斯迄(かくまで)理にさとくして、吉凶危福を兼て悟りて人にも告る程の術(じゆつ)あれば、げにも名獸ともいふべきに、いかなれば人をたぶらかし欺(あざむ)きなどする事、合點行ざる事と申ければ、彼老狐答て、人をたぶらかしなどの惡業をなす事、狐たる物殘らずさにはあらず。かゝるいたづら事をなすは、人間の多き内にもいたづら不屆をなす者あるが如しといひて笑ひけると也。
□やぶちゃん注
○前項連関:妖狐直連関。――というより、それに引っ掛けた現代へ直連関する痛烈な皮肉である。原発、政治、犯罪、不倫……「いたづら不屆をなす者あるが如し」……
・「爲(ため)」利益。役に立つこと。
■やぶちゃん現代語訳
老狐名言の事
この弥次郎狐か、他の老狐で御座ったか――ちょっと失念致いてござるが――ともかくもさる老狐で、人に古き出来事を語っては、しばしば有意に、人の役に立つ助言など致いて御座った老狐が御座ったと思召されい。ある人が、この老狐に向かって、
「……畜類にてあり乍らも、かくまで道理に聡くして、しかも吉凶・禍福を事前に悟って人にも告ぐるほどの術を持って御座ればこそ、これはもう、狐は名獣とも言うてよかろうほどに……いかなれば、その狐が、片や、人を誑かして欺きなんど致すものか……これ、合点が行かぬことじゃ……」
と申したところ、かの老狐、答えて曰く、
「――人を誑かすなんどの悪行をなすこと、これ、如何なる狐も、皆、する、という訳では御座らぬ。……かかる悪戯(いたずら)なんどをやらかすは……沢山の人間の内にも、ほうれ、悪戯や不届きなることをなす者も……たんと、ある、のと……同なじ、ことじゃ……」
と笑って御座った、とのことで、御座る。
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