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2012/07/09

生物學講話 丘淺次郎 三 餌を作るもの~(1)

   三 餌を作るもの



Moguranosu


[もぐらの巣]

 

 動物は餌を見付け次第直に食ふのが常であるが、中には後に食ふために食物を貯へて置くものもある。猿が人參を頰の内に貯へ、鳩が豆を餌嚢の内に溜め、駱駝が水を胃の内に藏めることは人の知る通りであるが、かやうに身體内に貯へるのでなく、別に巣の内などに食物を貯へ込んで置く種類も少くない。例へば「もぐら」の如きは常に蚯蚓を食ふて居るが、地中で蚯蚓を見付ける毎に直に食ふのではなく、多くはこれを巣の内に貯へて置く。而して達者なまゝで置けば逃げ去る虞があり、殺してしまへば忽ち腐る心配があるが、「もぐら」は蚯蚓の頭の尖端だけを食ひ切つて生かして置く故、蚯蚓は逃げることも出來ず腐りもせず、生きたまゝで長く巣の内に貯へられ、必要に應じて一疋づつ食用に供せられる。また畠鼠の類は畦道などの土中に巣を造り、米や麥の穗を摘み來つてその中に貯へて置くが、猿が人參を狹い頰嚢に入れるのと違ひ、幾らでも貯へられるから、この鼠が繁殖すると農家の收穫が著しく減ずる。甚だしい時は殆ど收穫がない程になるが、斯かるときは毒を混じた團子を蒔いたり、鼠に傳染病を起させる黴菌の種を散らたり、村中大騷ぎをしてその撲滅を圖つて居る。「もず」は蛙や「いなご」を捕えると、之を尖つた枝に差し通して置くが、田舍道を散歩すると幾らもその干からびたのを見る。昔から、「もず」の「はやにえ」というて歌にまで詠んだものはこれである。また海邊に住んで魚を常食とする「みさご」といふ鷹は、捕へた魚を岩の上の水溜りに入れたままで捨てておくことがしばしばあるが、漁師はこれを「みさご鮓」と名づけて居る。これらも不完全ながら食物を貯へる例である。その他、蜜蜂が巣の内に蜜を貯へ、「ぢが蜂」が穴の内に「くも」を貯へるなど、類似の例は幾らもある。特に穀物を貯へる蟻の類になると、雨の降つた後に穀粒を地上に竝べ、日光に當てて一度芽を出させ、次にその芽を嚙み切つて萌(もや)しを再び巣の内に運んで貯藏するなど、實に驚くべきことをする。しかし以上述べた所は皆、後日の用意に食物を貯へて置くといふだけで、特に食物を作るのではない。

Misago

[みさご]

[やぶちゃん注:「駱駝が水を胃の内に藏める」について、ウィキの「ラクダ」では否定されている。『ラクダの酷暑や乾燥に対する強い耐久力については様々に言われてきた。特に、長期間にわたって水を飲まずに行動できる点については昔から驚異の的であり、背中のこぶに水を蓄えているという話もそこから出たものである』(無論、これは全くの嘘でこぶの内容物は脂肪で、『エネルギーを蓄えるだけでなく、断熱材として働き、汗をほとんどかかないラクダの体温が日射によって上昇しすぎるのを防ぐ役割もある。いわば、皮下脂肪がほとんど背中に集中したような構造であり、日射による背中からの熱の流入を妨ぎつつ、背中以外の体表からの放熱を促す』のである)。『体内に水を貯蔵する特別な袋があるとも、胃に蓄えているのだとも考えられたが、いずれも研究の結果否定された。実際には、ラクダは血液中に水分を蓄えていることがわかっている。ラクダは一度に八〇リットル、最高で一三六リットルもの水を飲むが、その水は血液中に吸収され、大量の水分を含んだ血液が循環する。ラクダ以外の哺乳類では、血液中に水分が多すぎるとその水が赤血球中に浸透し、その圧力で赤血球が破裂してしまう(溶血)が、ラクダでは水分を吸収して二倍にも膨れ上がっても破裂しない。また、水の摂取しにくい環境では、通常は三四~三八度の体温を四〇度くらいに上げて、極力水分の排泄を防ぐ。もちろん尿の量も最小限にするため、濃度がかなり高い。また、人間の場合は体重の一割程度の水が失われると生命に危険が及ぶが、ラクダは四割が失われても生命を維持できる』とある(アラビア数字を漢数字に代えた。以下同じ。)。ところが、では「胃に藏める」という謂いが完全な誤りかというと、ウィキでもラクダは水を一度に八〇リットル程度摂取することが可能であることが示されており、また、鳥取砂丘のらくだ遊覧を行なっている「らくだや」の「らくだで遊覧」のページには、鯨偶『蹄類(牛など)の多くは四室の胃をもっていますが、ラクダには第三の胃と第四の胃の区別がほとんどなく、退化してしまって、実質三室の胃を持』つが、『第一の胃の外面に多数の水泡があって、ここに水を五~六リットル蓄え、水の乏しい砂漠の旅に順応することができます』と記してある。思うに後者が誤りなのではなく、代謝量から言えば、恐らく血中保水機能の方が、有意に有効であるということではあるまいか?

『「もぐら」は蚯蚓の頭の尖端だけを食ひ切つて生かして置く』は、現在でも一般的に知られている事実とは言い難いが、富山大学環境生物研究室HPにかつて所載されていた(二〇一二年七月九日現在、検索のキャッシュで部分的に実見可能)モグラの学術的報告(著者不詳)の中に『ヨ-ロッパモグラではトンネルの一部などにミミズを貯蔵することが知られている(Skoczen1961).この時,モグラはミミズの頭部を噛んで,生きてはいるがうまく動けない状態にし,巣(33 項参照)やその近くのトンネルの内壁に埋め込んでしまう.その量は数 kg にもなり,1 ケ月前後の摂食量にも相当する量であった.このミミズの貯蔵は秋期の終わりの初霜の後で行なわれるとされており,食物の少ない冬期に備えるためであろうと考えられる.日本産のヒミズやモグラにおいても飼育下では同様の行動が観察されており,そこでの観察によると,モグラはトンネルに前足でミミズの体を押しつけ,さらに枯葉などを押しつけてミミズを覆う.ヒミズで 189 回,モグラで 98 回の観察例中,貯蔵の前にミミズの頭部をかじらなかった例は皆無であり(Imaizumi1979a;今泉,19811983),自然界でも同じことが行なわれている可能性が高い.また,建物の中に撒かれた粒状の殺鼠剤を,侵入してきたヒミズが 1 粒ずつ屋外へ運び去った例(御厨,1966)や,飼育下でアズマモグラがカイコガの蛹を約 20 30 個貯蔵した例(手塚,1957)が報告されている.ホシバナモグラでは雌雄ともに脂肪の蓄積によって冬期から初春にかけて尾が太くなり,食物の不足する冬期や摂食行動の鈍る交尾期や出産期の栄養の補給に役立つとされている(今泉・小原,1966Petersen and Yates1980).他のモグラ科動物には,このように体の一部が栄養を蓄えるように特殊化しているという報告はないと思われる.』という記載がある(引用はグーグルのキャッシュからの完全なコピー・ペーストで一切手を加えていない)。

「畠鼠」ネズミ目ネズミ上科キヌゲネズミ科ハタネズミ亜科ハタネズミ Microtus montebelli。日本固有種。背面の毛色は茶色または灰黄赤色、腹面は灰白色で、尾は短い。成獣は頭胴長は約九・五~一三・六センチメートル、尾長約二・九~五・〇センチメートル、体重約二二~六二グラム。造林地・高山のハイマツ帯・河川敷や田畑などの地表から地中約五〇センチメートルの間に網目状の巣穴を掘って生活する。イネ科・キク科を中心とする草を食べ、秋になると巣穴に食料を貯える。時に大発生してイネ・サツマイモやニンジンなどの根菜類及び植林した樹木や果樹に大きな被害を及ぼすことがある。夜行性(以上はウィキの「ハタネズミ」に拠った)。

『「もず」の「はやにえ」』鵙の早贄はスズメ目スズメ亜目モズ科モズ Lanius bucephalus の特異習性として知られるが、丘先生の食糧確保という見解は、実は現在では必ずしも主流ではない。というよりもこの早贄行動は根本的には全くその理由が解明されていないというのが現状である。以下、ウィキの「モズ」の当該箇所を引用しておく。『モズは捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟む行為を行い、「モズのはやにえ(早贄)」として知られる。稀に串刺しにされたばかりで生きて動いているものも見つかる。はやにえは本種のみならず、モズ類がおこなう行動である』(本邦で見られるモズ科はモズ Lanius bucephalus 以外に、アカモズ Lanius cristatus superciliosus・シマアカモズ  Lanius cristatus lucionensis・オオモズ  Lanius excubitor・チゴモズ  Lanius tigrinus の五種)。『秋に最も頻繁に行われるが、何のために行われるかは、全く分かっていない。はやにえにしたものを後でやってきて食べることがあるため、冬の食料確保が目的とも考えられるが、そのまま放置することが多く、はやにえが後になって食べられることは割合少ない。近年の説では、モズの体が小さいために、一度獲物を固定した上で引きちぎって食べているのだが、その最中に敵が近づいてきた等で獲物をそのままにしてしまったのがはやにえである、というものもあるが、餌付けされたモズがわざわざ餌をはやにえにしに行くことが確認されているため、本能に基づいた行動であるという見解が一般的である』。『はやにえの位置は冬季の積雪量を占うことが出来るという風説もある。冬の食糧確保という点から、本能的に積雪量を感知しはやにえを雪に隠れない位置に造る、よって位置が低ければその冬は積雪量が少ない、とされる』(私も富山で山里の古老から聞いた記憶がある)。なお、「はやにえ」は正しくは「はやにへ」である。

「歌にまで詠んだもの」万年青氏の「野鳥歳時記」の「モズ」に、以下の二首が挙げられている。鑑賞文も引用させて戴く(失礼乍ら、一部の誤表記を直させて貰った)。

 垣根にはもずの早贄(はやにへ)たててけりしでのたをさにしのびかねつつ   源俊頼

「夫木和歌抄」より。『この歌の意味するところは、モズは前世でホトトギスから沓(くつ)を買ったが、その代金(沓手)を払うことが出来なかった。現世になってモズはその支払いの催促を受け、はやにえを一生懸命つくってホトトギス』(しでのたおさ:ホトトギスの異称。)『に供えているのだというのである。モズの不思議な習性は、昔から人の関心を寄せていたようだ』。

 榛の木の花咲く頃を野らの木に鵙の早贄はやかかり見ゆ   長塚節

 

『榛の木の花は、葉に先立って二月頃に咲き、松かさ状の小果実をつける。これが鳥たちにとって結構な餌となるので、この木があると野鳥が集まる所だと推測できる。謂わば、探鳥の目当てのシンボルともなる木で』ある、と記される。

「みさご」タカ目タカ亜目タカ上科ミサゴ科ミサゴ属 Pandion に属する鳥の総称。Pandion haliaetus のみとする説と、 Pandion cristatus の二種目をおく説とがある。

「みさご鮓」ウィキの「ミサゴ」には以下のようにある。『「本草綱目啓蒙」において、ミサゴは捕らえた魚を貯蔵し、漁が出来ない際にそれを食すという習性が掲載され、貯蔵された魚が自然発酵(腐敗でもある)することによりミサゴ鮨となると伝えられていた。ミサゴ鮨については「甲子夜話」(松浦静山)』(これは同書の正編巻第三十にある「みさご鮓」のことを指している)、『「椿説弓張月」(曲亭馬琴)などにも登場する。ミサゴが貯蔵した発酵し、うまみが増した魚を人間が食したのが寿司の起源であると伝承される。そのため、「みさご鮨」の屋号を持つ寿司屋は全国に少なからず点在している。また「広辞苑」にも「みさごすし」の項目があり、解説がある』(「広辞苑」には「鶚鮨(みさごすし)」として『ミサゴが岩陰などに貯えて置いた魚に潮水がかかって自然に鮨の味となったもの。』とある)。『この逸話に対して反論者もいる。動物研究家實吉達郎は自著「動物故事物語」において、ミサゴにそのような習性もなければ十分な魚を確保する能力もないとし、この話を否定している』。『なお、類似した伝説としては、サルがサルナシなどの果実を巣穴に貯めて「製造した」猿酒や養老の滝がある』と記す。少なくとも、ウィキのこの項を書いた人物は「猿酒や養老の滝」伝承を最後に引っ張る以上、本説を否定しているものと考えられる。丘先生、どうもこれは現在、肯定派には分が悪そうです。そんな気がしてました――だって、先生――ミサゴの英名は“Osprey”――今や悪名高き、先の注で出した米軍のVTOL機なんですもの……

『「ぢが蜂」が穴の内に「くも」を貯へる』膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目ジガバチ科ジガバチ亜科ジガバチ属ジガバチ Ammophila sabulosa infesta 或いはジガバチ科 Sphecidae に属するハチ類の総称。特異にして多様な習性を持つ幼年期を捕食寄生者として過ごす寄生昆虫である。餌はクモ類の他、チョウやガの幼虫で、私の大好きなファーブルの観察で知られように、麻酔針で麻痺させ、卵を産み付け、土中の穴やワラなどの管・木部の穴に封入、餌は常に新鮮にして、生きながら幼虫が内側から食い殺す、という素敵な奴である。ワラなどの管、木部の穴(穿孔性の甲虫などが開けた穴を利用することが多い)を利用する。種によっては土中に穴を穿つものもある。

★乞御教授!!!★「穀物を貯へる蟻の類になると、雨の降つた後に穀粒を地上に竝べ、日光に當てて一度芽を出させ、次にその芽を嚙み切って萌(もや)しを再び巣の内に運んで貯藏するなど、實に驚くべきことをする。」この蟻、いろいろ調べてみたが、遂に同定出来なかった。最後まで私の中で残ったのは膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目スズメバチ上科アリ科フタフシアリ亜科クロナガアリ Messor aciculatus 及び同属のクロナガアリ類である。ウィキの「クロナガアリ」によれば、『働きアリが地上で活動するのはほぼ秋に限られ、秋になると巣の入り口を開け、巣を補修した土を巣穴の周囲にうす高く積み上げる。働きアリは他のアリのように昆虫の死骸などを運ぶことはなく、もっぱら巣の周囲のオヒシバやエノコログサなどイネ科植物の実を回収し、巣穴に運びこむ。小さな草の実を回収するため、回収作業もほぼ1匹ずつで行う。巣の中では運びこんだ実の殻を剥ぎ、食料庫に蓄える』とある。しかし、『秋以外はほぼ巣穴を閉ざし地下生活をする』ともあり、そもそもが降雨時にその穀類を外に運び出して浸水発芽させ、晴天時に乾かして、それを再度食糧庫に貯蔵するという特異的行動の記載がないから違う。識者でも昆虫少年でも、どうか、御教授下されい! このアリは誰!?

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