「20世紀少年」を見た後で(映画批評にあらず)
昨日の夕方、「20世紀少年」を見終わった5時過ぎにアリスの散歩に出かけたのだが、いつも行く原っぱに突然、刈り上げ頭の小学校3~4年生と思われる少年が寄ってきたんだ。そして、
「……ヨモギの葉っぱの後ろにとまってたんだ。」
といって摘まんだじっとしている蝉を僕に見せた。
「ヨモギの葉っぱの後ろに?……それじゃ、もう弱ってるのかも知れないね。……」
と僕が答えると、彼は、
「うん。」
と答えると、そばの草むらにそっとその蝉を置いて僕に微笑んだ。――
それからその十数分後、散歩の帰りのことだ。向こうから小さな妹とやはり小学校3~4年生の兄と思われる(さっきの少年とは違って華奢な感じのする美少年だった)がやってきた。やはり、一度も逢ったことのない子供たちだった。3歳ほどの妹が立ち止まると、にこにこしながらアリスの頭を撫ぜた。後から来た兄が、
「触っても平気ですか?」
と聞いた。妹を心配しての言葉かと思ったから、
「大丈夫だよ。」
と僕が答えたところ、彼も何度もアリスの頭を撫ぜた。そして、
「ありがとう。僕は犬が怖くて触れなかったけど、いっぱい触れました。」
と微笑みながら挨拶したのだった。――
僕は高校生にはモテなかったが、今でも子供にだけはモテる。高校生には大人ぶって肩張って構えていたが、子供には構える必要がないからかもしれない。いや、単に僕が元来、遅れてきた少年みたように子供じみているからかもしれない。
それにしても――「20世紀少年」を見た直後の私は彼らが、1960年代の後半の僕の少年時代の――「友達」だったような気がした。不思議な体験だったのだ。