僕は見つけしまったよ……愛する芥川龍之介君……
日記とは……いや……本当の「日記」でも、実は誰も本当のことを書くとは限らないのさ……それは僕も同じだからね。このブログもおんなじさ……芥川君……だから君が残した「日録」と称する、偽った「日録」の大嘘を……僕は今日……確かに見つけてしまったのだ……僕の注釈は容赦はしない……でも、それは……
きっと君を「文学史的著名文学者」という……実は君の最も呪詛したところの世界から……君を解き放つ……
僕は確かにそう感じている……
君が言ったように――
わたしは勿論失敗だつた。が、わたしを造り出したものは必ず又誰かを作り出すであらう。一本の木の枯れることは極めて區々たる問題に過ぎない。無數の種子を宿してゐる、大きい地面が存在する限りは。
私は君の「造り出した」またの「失敗」である――
しかし無数の「失敗」の果てにたまさかの真理は光るのではないだろうか?――
さあ行こう!――
君の――
ビルマに今もいる――
最愛の多加志の魂を誘って――
スマトラの勿忘草の花の元へと……芥川君……
僕のやっていることは『文学研究』なんて木乃伊みたいなもんじゃあ――ない――
それはちっぽけな――今生きて行かねばならぬ「人」とは何か――ちっぽけなそんな「人」の――ちっぽけな各人の孤独な世界を――そうしてそれを作った、ちっぽけな「死者」との――ちっぽけでも温もりに満ちた対話とは――何だったのか――だったのさ……