「耳嚢」訳注夢+母夢
――毎日「耳嚢」をテクスト化して訳注を加えているうちに、本未明は夢でそれをやっていた。――
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……僕は「伊勢屋丸薬の事」という「耳嚢」の一節を訳注しようとしている(注:そんな条は実際の「耳嚢」に存在しない)。……「伊勢屋」という薬種屋は現在まで続いて居てそれが現在のどの製薬会社に当たるのか、私はネット検索で現存する薬メーカーのHPをマニアックに総覧している。……ところが……調べて行くうちに……ある薬品メーカーのCPに忍び込み、その極秘の丸薬の調剤方法をダウンロードすることに成功する……それを僕は小さな丸薬状のデータ・チップに保存する……
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――と――そこで目が覚めた。同時に顔に違和感があって左の蟀谷(こめかみ)を触ると「小さな丸薬状の」クロットが感じられた。僕はそれを剥がした(これらは覚醒時の事実である)。さっき見たら、小さな傷がそこにはあった。――
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……他にも、母が出て来る夢が前後に挟まっていた……
……前のそれは……昔の今の家の回りにすっかり雪が積もって母と小学生の僕が二人静かに風呂に浸かっている……
……後のそれは……その風呂から上がった僕は既に母がALSであることを知っていて、何とか母を助けなければ、と子供ながらに何かをしようと昔の家の中を右往左往している……
……さらにその間に……家の下水が溢れかえる映像が何度もインサート、フラッシュ・バックされ……
……それらの間に間歇的な覚醒が挟まって……
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4:28に臥所に居たたまれずなって起きた。夢自体の不快さではなく、度重なる覚醒が不快であったためである。但し、それは妻の就寝やトイレに起きる物音による外的要因が作用もして、相乗効果を齎した結果である。妻は室内でもスチール製の杖を突かねば歩けない。寝室は二階にあり、妻の杖と足音は、これ、存外に深夜の静寂に大きく響くのである。
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