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2012/10/18

生物學講話 丘淺次郎 第五章 食はれぬ法 (二)隠れること~(6)

Kakureuo

[隱れ魚]

 「なまこ」は一寸見ると、どちらが頭かどちらが尻か分らぬやうであるが、生きて居るのを觀察すると、頭の方には口があつて、その周圍に枝分れした指の如きものが竝び生じ、常に徴細な食物を口の中へ運び入れて居る。また尾の方には大きな肛門があつて、人間が呼吸するのと略々同じ位の囘數で絶えず開閉して多量の海水を吸ひ入れたり噴き出したりする。されば「なまこ」の尻の内は常に新たな海水が出入して、小さな動物の住むには適するものと見えて、「かに」が往々その中に隱れてゐることは前に述べたが、なほその他に一種の魚が住んで居ることがある。前の「かに」を「隱れがに」といひ、後のを「隱れ魚」と稱するが、いづれも單に「なまこ」の體内の空處を利用して居るに過ぎぬから、「なまこ」に害を及すことなしに、自身は稍々安全に生活が出來る。「隱れ魚」は形が稍々「あなご」に似た細長い魚である。日光に當たらぬから色は餘程白い。大きな餌を喰ひたいとか、大勢集まつて賑かに暮したいとか思ふ普通の魚類に比べると、競爭を恐れる意氣地なしのやうに見えるが、紛々たる魚界の俗事を餘處にして、「なまこ」の尻の内に悠々自適して居る「隱れ魚」は、所謂風流人に似た所がないでもなからう。

[やぶちゃん注:「隱れ魚」条鰭綱新鰭亜綱側棘鰭上目アシロ目アシロ亜目カクレウオ科 Carapidae に属する海水魚。オニカクレウオ亜科 Pyramodontinae とカクレウオ亜科 Carapinae の二亜科で構成され、七属三一種が記載される。ナマコや二枚貝などの他の底生生物の体腔内に隠れ住む習性を持つ種が多い(オニカクレウオ属などには自由生活をするものもいる)。体は細長く、鱗がなく、腹鰭もない。以下、参照したウィキの「カクレウオ」から引用するが、彼らの生態はあまりよく分かっていないのが現状である(アラビア数字を漢数字に代え、一部の記号を変更、注記号は省略した)。『インド洋・太平洋・大西洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布』し、『サンゴ礁など沿岸の浅い海から水深二〇〇〇メートルに至る深海まで、生息域は幅広い。主に海底付近で生活する底生魚のグループであり、日本近海からは少なくとも六属一二種が知られている』。『本科魚類はナマコなど他の底生生物の体内に隠れ住むという、際立った習性をもつことで知られている(inquiline:偶棲生物)。肛門などの開口部から宿主に侵入したカクレウオの仲間は、昼間は体内に潜み、夜間に外に出て小型甲殻類を捕食する。宿主の内臓を食い荒らすような寄生性が一部の種類に指摘されているが、明瞭な証拠は得られておらず、一般に片利共生とみなされることが多い。カクレウオ属・シロカクレウオ属・シンジュカクレウオ属(いずれもカクレウオ亜科)の仲間がこの習性をもつ一方、オニカクレウオ亜科およびクマノカクレウオ属・ソコカクレウオ属は共生をせず、生涯自由生活を送る』。『ナマコの他にヒトデ・二枚貝・ホヤなども宿主となり、一匹のナマコの中に十五匹のカクレウオが共生していた例が知られている。本科魚類の英名「Pearlfish」は、カクレウオ類の一種がカキの殻の中に埋まった状態で発見されたことに由来する』。『二つの段階に明瞭に分かれた仔魚期を送ることも、本科魚類の特徴である。第一期(vexillifer期)の仔魚は長い背鰭鰭条をたなびかせながら中層を漂い、浮遊生活を送る。仔魚は第二期(tenuis期)になると底生生活に移行し、長い背鰭鰭条は脱落し体長の短縮が生じる。この時期に宿主との共生生活に入るものとみられている』とある。但し、英名については、荒俣宏氏の「世界大博物図鑑2 魚類」の「カクレウオ」には『北アメリカでは真珠貝のなかにいるのがふつうである。ただ、真珠貝にすむカクレウオは、ときとして貝の中に閉じ込められる危険性があり、そのうえ真珠質で体を塗りこめられることもある。真珠色の魚になれば、文字通りパールフィッシュだ(ノルマン《魚の博物学》』とあって、こちらの方がしっくりくる。荒俣氏は同項でカクレウオ属 Encheliophisとシロカクレウオ属 Carapus の学名を『エンケリオフィスは、ギリシア語の〈ウナギ enchelys〉と、〈ヘビ ophis〉を合わせたもの。この魚の形態を示す。カラプスは本種を指すアマゾンのトゥピ族の言葉 carapo に由来する』とされている。また、上記のノルマンの著作から、『カクレウオがナマコの体内にはいるときは、まず頭でナマコの肛門を探し、次に尾を丸く曲げて肛門の中に挿入し、体をまっすぐにして、後ろ向きに蠢動(しゅんどう)しながら宿主のなかに入る』とあって、荒俣氏は一貫してナマコの体内の損傷の可能性を記しておられ、平凡社一九九八年刊の日高敏隆監修「日本動物大百科 第6巻 魚類」の林弘章氏の記載でも『一般に「ナマコ類と共生」するといわれているが』、『ナマコ類を宿主とする場合は共生よりもむしろ寄生に近く、宿主の内臓や生殖腺を食べることが知られている』とあり、私もこれを共生(片利共生)と呼ぶことには懐疑的であることを記しておきたい(荒俣氏・林氏の引用部はコンマとピリオドを句読点に代えた)。

「頭の方には口があつて、その周圍に枝分れした指の如きものが竝び生じ」口触手(若しくは単に触手)と呼ぶ。ベントス食である彼らの触手は種によって微妙に異なり、それぞれが異なる大きさの細粒状堆積物を採餌している。]

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