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2012/10/08

生物學講話 丘淺次郎 第五章 食はれぬ法 (一)逃げること~(2) 了

 飛魚が水上に飛び出すのも敵から逃れるためである。水中には飛魚を追ひか捕へて食はうとする大魚が澤山に居るが、これから逃れるために、飛魚はまづ全身の筋肉を働かせ、尾で水を跳ねて空中に躍り出て殆ど身體と同じ長さの大きな胸鰭を扇の如くに開き、空中に身を支へながら三四囘も波形を畫いた後、出發點から二百米以上も隔つた處で再び水中に歸る。かくすれば水中の敵からは逃げられるが、空中にはまた「かもめ」の類が飛魚の飛び出すのを覗つて、捕へ食はうと待ち受けて居るから、何疋かは必ずその餌となるを免れぬ。どこへ行つても生活は決して安樂ではない。

Tobiuob


Tobiuoa

[飛魚]

[やぶちゃん注:上が大正一五(一九二六)年版の図(国立国会図書館蔵。同ホームページより挿絵のみトリミングして転載)。下が講談社学術文庫掲載図。全く異なる。【2014年1月4日上図正式追補・国立国会図書館使用許諾済(許諾通知番号国
図電1301044-1-5703号)】]


[やぶちゃん注:「飛魚」ダツ目トビウオ科 Exocoetidae に属する魚類の総称(科名はギリシア語“exo koitos”、「棲家から出て来る」の意)。太平洋・インド洋・大西洋の亜熱帯から温帯の海に棲息、全五〇種ほどの内、日本近海では三〇種弱が観察出来る。その形態は、体躯自体が細い筒状の逆三角形の断面を持つ体をしており、最大種でも全長約三〇~四〇センチメートルに留まり、背は藍色で腹は白色(青魚のブルーバック効果)、胸鰭が発達して著しく大きく、尾鰭は上端と下端が長く伸びたV字状となっており、特に下端が長く、水面から飛び立つ際の推進力を効率よく伝えられるようになっている。滑空時には胸鰭を広げ、グライダーの翼のような役割を担う。同様に腹鰭も大きな種がおり、この場合には四枚の翼で飛ぶように見える。飛翔の目的は主にトビウオを好餌とするシイラ・サメ・マグロなどの捕食者から逃げるためとされている。一般的な滑空は一〇〇メートル程度は普通に可能で、水面滑走速度は時速三五キロメートル、空中滑空速度は時速五〇~七〇キロメートル、滑空高度は高い場合は水面から三~五メートルまで達する(日本おさかな雑学研究会 「頭がよくなる おさかな雑学大事典」に拠れば、大型のものでは六〇〇メートル程度滑空するものがあるとする)。シイラに飛翔を読まれて逆にシイラの口に飛び込んでしまったり、漁船などに自ら飛び込んでしまうケースもある。二〇〇八年五月にNHKクルーが鹿児島沖のフェリーから四五秒間にわたって(途中、水面を何度か尾鰭で叩きながら)飛翔し続ける様子を撮影したものがあるが、は映像として捕えられた過去最長記録と報じられた(以上は主にウィキの「トビウオ」を参照した。飛翔映像のリンク先は二〇〇八年五月二〇日附のBBCニュースの動画で、本注を附した二〇一二年一〇月八日現在でも視聴出来る)。]

 

 以上はいづれも敵を後に殘して空中へ飛び出すものであるが、敵に食はれぬために水中へ逃げ込む動物も澤山ある。「をつとせい」・「あしか」・「あざらし」のやうな海獸は身體の形狀が遊泳に適して、陸上では運動が頗る拙であるから、敵に遇へば直に水中に飛び込んで逃げる。「かはをそ」〔カワウソ〕なども危險にぎ遇へばまづ水中に逃げ込む。南極に近い方の無人島に非常に數多く棲息する「ペンギン鳥」も、常には岩の上に一面に竝んで居るが、攻められれば忽ち水中に飛び込んで逃げる。翼が極めて短く、且羽毛が殆ど鱗の如くであるから、無論この鳥は空中に飛翅することは出來ぬが、その代り水中に入れば翼を用ゐて恰も魚の如くに自由自在に遊泳する。「がん」や「かも」が泳ぐのは全く足の運動によるが、「ペンギン鳥」では足はたゞ舵の役を務めるだけである。なほ逃げることによつて身を護る運動は幾らでもあつて誰でも知つて居るものが多いから、わざわざ例を擧げることは以上だけに止めて置く。

Pengin

[ペンギン鳥]

[やぶちゃん注:「かはをそ」食肉(ネコ)目イタチ科カワウソ亜科 Lutrinae に属するカワウソ類の古称。「かわをそ」とは「川恐」で、川に住む恐ろしい魔物の謂いである。なお、カワウソ亜科にはカワウソ属ユーラシアカワウソ亜種 Lutra lutra whiteleyi ニホンカワウソ(独立種とする考え方もある。但し、昭和五四(一九七九)年以来目撃例がなく、今年(二〇一二年八月)、環境省はレッドリスト改訂で正式に絶滅種と認定した。昭和まで棲息していた哺乳類で絶滅種に指定されたものは本種が初めてである)などの他、ラッコ類も属す。

「飛翅」「飛翔」の誤植とも思われるが(講談社学術文庫版は「飛翔」)、農作物を食害する昆虫を謂うのに「飛翅害虫」という専門用語があるので、一応、ママとしておく。]

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