遺伝子診断夢
本未明の第一話。
僕は新しい山間の高校に赴任して間もない(実在する学校ではなく、同僚も悉く見知らぬ人々であった)。
どうも僕は着任早々に体調を崩し、学校医の若い男性の内科医(これも全く見知らぬ人物)に診察して貰ったことがある、という設定らしい。
その日は職員の内科健診の日で、私の番がくると、その内科医は、
「その後は如何です?」
と訊ねるから、
「どうもこのところ喉の調子が悪くて。」
と言うと、医師は舌圧子で舌を押さえ、ライト(懐中電灯である)で咽頭を診た(この時、その医師からの見た目の映像となった)。
咽頭は白っぽく腫れていた。
その時、僕は医師に、
「先生、母はALS(筋萎縮性側索硬化症)で先日亡くなったのですが、最近、ALSの遺伝的因子が新しく発見されていますね。実は私の父母は従兄妹同士の結婚なのですが、遺伝子診断をした方がいいでしょうか?」(この母の死因やALS遺伝因子の発見や父母の関係は総て事実である。)
と切り出した。彼は、
「ちょっと。」
というと、そのまま検査会場から姿を消してしまい、なかなか戻って来なかった(このシーンは、母から聞いた、母の病気がALSではないかと疑った際の入院先の医師の実際の行動がモデルであると考えられる)。
僕は何故か、上着を上げて腹を出したまま(内科の診断であるから)、無様に待っている。
その向こうに同僚の職員が沢山いて、待つのにウンザリしているのが、その表情から手に取るように分かる(だからそれが「異常に長い間であった」事実として実感されている)。
やっと医師は戻ってきた。
「まあ、御心配には及ばないと思いますが。」
と言いながら、彼の手から町の大病院への紹介状が手渡された。
職員室に戻ると、同僚が心配してあれこれと語り掛けて来る(このシーンの会話は失念した)。
夕方、僕は山間の間借りしている農家に戻った。
僕に馴染んでいる主人の息子(この子だけが実在する少年――先のブログで書いた「ドンキー少年」であった)のために、僕は厨(くりや)で、パスタをゆでている。
その湯気を眺めながら僕は何か考え込んでいる。
そこに少年が駆け寄って来る。
少年は無言で僕を見上げて笑っている。……(そのクロース・アップでフェイド・アウト)
注:ALSの遺伝的要因による発症は10%程度と低く、三代前まで厳密に遡って調べないと遺伝性を疑うことは出来ないそうである。原因不明の孤発性のものが殆どである(なお、その孤発性の場合の遺伝子上の問題が検討されているようだが、無論、これについても殆ど分かっていない)。10ほどの特定因子は見つかっているとはいえ、遺伝子診断は難しいようだ(一部のケースでは可能であるらしい)。因みに、私は可能であっても遺伝子診断をする意志は全くない(私は遺伝子診断、特に出産前遺伝子診断には大きな問題があると考えている)。寧ろ、それで分かったとして――ALSは発症のメカニズムも効果的治療法も発症の時期も、発症後いつ死ぬかも分からない癌よりも厳しい疾病であることは母を通して実感している――メンタルな部分で厳しくなることは目に見えているからである。それにしても、僕には不思議に印象的な夢であった。
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