一言芳談 二十四
二十四
明禪法印云、利益衆生(りやくしゆじやう)とて、ことごとしくせねども、眞實の生死(しやうじ)をはなれんとおもへば、分々(ぶんぶん)に利益はかならずあるなり。
[やぶちゃん注:岩波版では「眞實の生死をはなれんとだにおもへば」と副助詞が入る。
「分々に利益」それぞれの「分(ぶん)」に相応した利益(りやく)。すると以下のようなことが見えてくる。即ち、この短かい条は、前半は僧の意識的な「利益」――衆生への作善――の無効性を、後半は一切衆生への弥陀の大慈悲による各自にもとより与えられてあるところの「利益」――の発動の自動性や絶対性への確信を述べているということである(既に述べた通り、明禅法印は法然滅後に浄土宗に帰依している)。]