僕の新しい世界の扉
昨日、僕は実にスリリングな、そして素晴らしい一冊の本を入手した。
平嶋 義宏氏の「学名論―学名の研究とその作り方 」という本である。
僕は今まで諸テクストの注で生物の分類学タクソンの表示と「永遠に変わらぬ」学名を表記するだけで、満足してきた。しかし、実はその学名自体の「意味」を、僕は十全に理解していた訳ではなかった。確かに、幾つかの学名は荒俣宏氏の「世界大博物図鑑」の叙述や、自身の探究で示したものもなかった訳ではない。しかし、その大半は、生物学的な不変の名という伝家の宝刀的規定に、どこかで胡坐をかき、甘んじていたに過ぎなったった。
記載する際に多くは、「何故、そう名乗るのか?」という素朴な疑問にさえ、僕はおぞましくも眼を瞑っていたのだった。
……僕はこれから、遠い昔、盟友から贈られた「羅和辞典」と、そして、この本を用いて、正しい永遠の生物の「名」の、その始原の旅を始めることにする。
……恋人の名前は何と言う?
……どうしてそんな姓であり、そんな名なのか……あなたは考えませんか?……僕はこれから……そんな恋人の名を探る、遠大な旅に――出掛けることにした……それは僕には……もしかすると……新しい恋をする以上にドキドキすることだ……とだけは言っておこう――