一言芳談 五十一
五十一
明遍僧都云、紙ぎぬに衣紋(えもん)つくろふ程の者は、不覺人(ふかくじん)にて有(ある)なり。
〇紙ぎぬに、紙衣のえりつまをそろへてきんとするは、なほ身を愛しかざる心あるなり。
[やぶちゃん注:「紙ぎぬ」紙子紙(かみこがみ:厚手の和紙に柿渋を引き、日に乾かしてよく揉み和らげ、夜露に晒して臭みを抜いたもの)で作った紙子。古くは律宗の僧が用い始め、後には一般に使用された。軽く、保温性に優れ、大橋氏の注から察するに、当時の僧は特に冬場の防寒用の法衣としたらしい。
「衣紋」衣服を形良く、着崩れしないように着ること。特に襟を胸元で合わせる仕草。]