一言芳談 七十
七十
敬佛房云、後世者の法文(ほふもん)は、紙一枚にすぎぬなり。
〇紙一枚、出離は博學によらず。修行の肝要は一枚にしるすに不足なし。起請のごとし。
[やぶちゃん注:「法文」仏法の真理を説き明かした文章。
「紙一枚」湛澄が「起請のごとし」と述べているように、源信の「横川法語(よかわほうご)」(全四九一字から成り、妄念を厭わずに念仏することを勧めて凡夫の往生を強調したもの。「念仏法語」とも)や法然の「一枚起請文」(全三八七字から成り、念仏の要義を一枚の紙に平易な文章で書き記して釈迦・弥陀に偽りのないことを誓った文。「一枚消息」とも)を想起しているものと思われる。
訳したい。
――敬仏房は言った、「念仏によって救われることを心から体得した者の純粋智とは、書き記すに、たった一枚の紙にて足るものである。」と。]