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2013/01/18

生物學講話 丘淺次郎 第六章 詐欺 三 擬態~(4)/了

 擬態の最も面白い例は外國産の蝶類にある。蝶類の中には飛翔が速で、巧に敵から逃げるもの、色や形が他物に似て敵の注目を免れるもの、味が頗る惡いために鳥の方で避けて啄まぬものなどがあるが、味の惡い種類は特に鮮な色を呈し、ゆらゆらと遲く飛ぶ癖がある。しかるに南アメリカ産の蝶などを調べると、味の惡くない類であるのに自分等の仲間とは翅の形も色も著しく違つて、却つて味の惡い種類と見分けの附かぬ程に似て居るものが幾種も見出される。翅の形や色は如何に變化しても翅の脈は容易に變らぬから、かやうな蝶も翅の脈を檢査せられては素性を隱すわけには行かぬが、これなどは實に擬態の模範ともいふべきもので、見誤らせて敵の攻撃を免れることに成功して居るのである。

[やぶちゃん注:「味の惡い種類は特に鮮な色を呈し、ゆらゆらと遲く飛ぶ癖がある」アゲハチョウ上科タテハチョウ科ドクチョウ亜科 Heliconiinae に属するドクチョウの仲間の多くはそれぞれが毒を保有しているが、これら六十~七十種もいるドクチョウは、全く違う種であるにも関わらず、互いに非常によく似た派手な警告色の羽模様を持っており、おしなべてゆっくりと飛翔する。これは例えば、一種類の蝶が鳥一羽に対し一頭の蝶が犠牲を出さなければならないのに対して、五種類の蝶が同じ様な模様を共有することによって、どれか一種類の蝶が一頭犠牲になることでひいては他の四種の蝶類四頭の生命が救われるという非常に効率の良いシステムとなっている。これは、本現象をドクチョウで発見したドイツ人博物学者ヨハン・フリードリヒ・テオドール・ミューラー(Johann Friedrich Theodor Müller 一八二一年~一八九七年)に因み、「ミューラー型擬態(Mullerian Mimicry)」と呼ばれる。但し、これらの蝶類は、実際に各種が実際に毒を持って自己防衛行っているのであるから、本来の「擬態」の定義からすれば、ミューラー型擬態は「擬態」とは言えない。むしろ、ミューラー型模倣とか、ミューラー型類擬態とするべきではないかと私は思う(以上は、白岩康二郎氏の百科ホームページ プテロン・ワールド」擬態について:ミューラー型を参考にさせて戴いた)。

「しかるに南アメリカ産の蝶などを調べると、味の惡くない類であるのに自分等の仲間とは翅の形も色も著しく違つて、却つて味の惡い種類と見分けの附かぬ程に似て居るものが幾種も見出される」これは自己防衛を目的として、無毒種が他の有毒種に擬態しているので、既出の典型的なベイツ型擬態である。]

 なほ次に圖を掲げたのは、皮が堅くて食へぬ蟲と、味が惡くて食へぬ蟲とこれらに似た他の昆蟲類の擬態である。下の段に竝べたのはいづれも甲蟲類で、極めて皮の厚い「こくざうむし」と、味の惡い「てんたうむし」、また上の段のは、これらに似た「かみきりむし」と「いなご」とであるが、その中でも、「いなご」の類は甲蟲とは全く別の組に屬するにも拘らず、恰も「こくざうむし」や「てんたうむし」の如くに見えるやうに、體の形狀が全く變化して居る。「いなご」の中には蟻の通りに見える種類があるが、これなどは身體が眞に蟻の如き形になつて、胸と腹との間に縊れが出來たのではなく、彩色によつて巧に蟻の姿を眞似て居るにすぎぬ。また南アメリカに産する蟻の一種で常に木の葉を嚙み切つて一枚づつ銜へて歩くもののあることは前に述べたが、この蟻に交つて歩く一種の「ありまき」類の昆蟲は、背から綠色の扁たい突起が縱に生じて、恰も蟻が緑葉を銜へて居る如くに見える。これなどは擬態の中でも最も巧妙なものの例で實に驚くの外はない。

Beitugitai 

[昆蟲の擬態]

[やぶちゃん注:「こくざうむし」鞘翅(コウチュウ)目多食亜目ゾウムシ上科オサゾウムシ科オサゾウムシ亜科コクゾウムシ族コクゾウムシ Sitophilus zeamais

「てんたうむし」鞘翅(コウチュウ)目カブトムシ亜目 Cucujiformia 下目ヒラタムシ上科テントウムシ科 Coccinellidae に属する小型甲類の総称であるが、ウィキテントウムシ」によれば、テントウムシ類は全般に『幼虫・成虫とも強い物理刺激を受けると偽死(死んだふり)をし、さらに関節部から体液(黄色の液体)を分泌する。この液体には強い異臭と苦味があり、外敵を撃退する。体色の鮮やかさは異臭とまずさを警告する警戒色といえる。このため鳥などはテントウムシをあまり捕食しない』とある。

「かみきりむし」鞘翅(コウチュウ)目カブトムシ亜目ハムシ上科カミキリムシ科 Cerambycidae に属する甲虫の総称。

「いなご」直翅(バッタ)目バッタ亜目イナゴ科 Catantopidae に属するバッタ類の総称。ここで示されたものは典型的な、しかも目レベルで遠く隔たった種間のベイツ型擬態である。

「蟻の一種で常に木の葉を嚙み切つて一枚ずづつ銜へて歩くもの」ハチ目ハチ亜目有剣下目スズメバチ上科アリ科 Formicidaeフタフシアリ亜科ハキリアリ族 Attini に属するハキリアリ族。「三 餌を作るもの」で既注済み。

『この蟻に交つて歩く一種の「ありまき」類の昆蟲は、背から綠色の扁たい突起が縱に生じて、恰も蟻が緑葉を銜へて居る如くに見える』「ありまき」は有翅亜綱半翅(カメムシ)目腹吻亜目アブラムシ上科 Aphidoidea に属する「アブラムシ」類でアリマキ(蟻牧)とも呼ぶ。本種は私もNHKの映像で見たことがあるが、ネット上では種の同定は出来なかった。識者の御教授を乞う。なお、コロ氏のHP「多様性を求める旅」のハキリアリ」のページには、ハキリアリは刈り取った葉を巣に持ち帰って特殊なキノコをつくる肥料として農園(菌園)を営む。ハキリアリが育てている菌はアリタケと呼ばれ、ハキリアリの巣の中以外ではみつからない。ハキリアリはアリタケの胞子から栄養分としての糖分を貰っており、また、アリタケは他の菌などの外敵からハキリアリに守ってもらっているという相互共生(mutualism)が成り立っているとされた上で、『ハキリアリはアブラムシも巣の中に飼っている。これも相互共生という形で形成されている。アブラムシは植物の汁を吸って、糖分が含まれている汁を分泌する。これがハキリアリにとって餌になる。そしてハキリアリはアブラムシを天敵から守ると同時に、アブラムシの卵を巣の中で育てることもする。このため、ハキリアリは農園だけでなく牧場も経営するなどと表現する場合がある』と解説しておられる。]

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