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2013/01/24

西東三鬼句集「變身」 昭和三十三(一九五八)年 八五句

昭和三十三(一九五八)年 八五句

 

個は全や落葉の道の大曲り

 

落葉して木りんりんと新しや

 

夜の別れ木枯炎ゆる梢あり

 

ネロの業火石燒芋の竈に燃ゆ

 

地に立つ木離れず鳥も切れ凧も

 

  南伊豆一二句

 

枯廣き拓地の聲は岩起す

 

岩山の淺き地表に豆の花

 

餠燒けば谷間の鴉來よ來よと

 

鼻風邪や南面巨巖ありがたく

 

死顏の寒季の富士は夜光る

 

刈田靑み伊豆の重たき鴉とぶ

 

山畑のすみれや背負う肥一桶

 

老いて割る嚴や金柑鈴生りに

 

蕗の薹岩間の土にひきしまる

 

呼ぶ聲や寒嚴の胎深きより

 

岩山の北風靑し目白捕り

 

犬妊み寒潮に浮く島七つ

 

素手で搔く岩海苔富士と共に白髮

 

夜の吹雪言葉ごとく耳に入る

 

寒析に合せて生ける肌たたく

 

[やぶちゃん注:「寒析」は「かんたく」と読む。「析」とは拍子木のこと。冬の季語。]

 

黑き月のせて三日月いつまで冬

 

これが最後の枯木の踊一つ星

 

落椿かかる地上に菓子のごとし

 

花咲く樹人の別れは背を向け合い

 

岩傳う干潟の獨語誰も聞くな

 

うぐひすや死顏めきて嚴に寢て

 

絶壁の氷柱夜となる底びかり

 

永柱くわえ泣きの涙の犬走る

 

寒のビール狐の落ちし顏で飮む

 

吹雪く野に立ち太き棒細き棒

 

首かしげおのれついばみ寒鴉

 

天の國いよいよ遠し寒雀

 

犬を呼ぶ女の口笛雪降り出す

 

宙凍てて鐵骨林に火の鋲とぶ

 

降る雪を高階に見て地上に濡る

 

蠅生れ天使の翼ひろげたり

 

道場の雄叫び春の鳩接吻

 

忘却の靑い銅像春のデモ

 

櫻冷え遠方へ砂利踏みゆく音

 

老斑の月よりの風新樹光る

 

體ぬくし大綠䕃の綠の馬

 

まかげして五月えを待つよ光る沖

 

[やぶちゃん注:「まかげ」は「目陰・目蔭」で、遠くを見る際、光線を遮るために手を額に翳(かざ)すことをいう。]

 

誕生日五月の顏は犬にのみ

 

荒れ濁る海へ草笛鳴りそろう

 

分ち飮む冷乳蝕の風起る

 

[やぶちゃん注:同年四月十九日に日本で大きく欠ける日食があった。]

 

いま淸き麻醉の女體朝の月

 

緑蔭の累卵に立ち鹽の塔

 

[やぶちゃん注:「累卵」は卵を積み重ねること。また、「累卵の危うき」で、積み上げた卵のように、非常に不安定で危険な状態の譬えともなる(「史記」范雎伝に拠る故事成句)。実景にこの故事を利かせるか。]

 

光る森馬には馬の汗ながれ

 

荒地すすみ朝燒雀みな前向き

 

遁走の蟬の行手に落ちゆく日

 

耳立てて泳ぐや沖の聲なき聲

 

強き母弱き父田を植えすすむ

 

假住みのここの藪蚊も縞あざやか

 

  大島・下賀茂 一二句

 

夜光蟲明日の火山へ船すすむ

 

知惠で臭い狐や夏の火山島

 

死者生者竜舌蘭に刻みし名

 

溶岩の谷間文字食う山羊の夏

 

靑バナナ逆立ち太る硝子の家

 

飛び込まず眼下巖嚙む夏潮へ

 

母音まるし海南風の溶岩(らば)岬

 

[やぶちゃん注:ルビの「らば」は日本語ではない。“lava”(ラヴァ)で英語で溶岩の意。元来はイタリア語の豪雨で突然発生した奔流の意の“lava”が語源。]

 

ラムネ瓶握りて太し見えぬ火山

 

聲涼しさぼてん村の呆け鴉

 

巖窟の泉水增えし一滴音

 

老いの手の線香花火山犬吠え

 

裸そのまま力士の泳ぎ秋祭

 

秋祭生きてこまごま光る種子(たね)

 

秋潮に神輿浮かべて富士に見す

 

天高しきちがいペンをもてあそぶ

 

石崖に嚙みつく蝮穴まどひ

 

梯子あり颱風の目の靑空へ

 

颱風の目の空氣中女氣(によき)を絶つ

 

新涼の咽喉透き通り水下る

 

つぶやく名良夜の蟲の光り過ぐ

 

眞つ向に名月照れり何はじまる

 

犬の戀の樂園苦園秋の風

 

  男鹿半島と八郎潟 一〇句

 

生ける雉子火山半島の路はばむ

 

舊火山純なるものは暖かし

 

水飮みて醉ふ秋晴の燈臺下

 

若き漁夫の口笛千鳥從へて

 

白魚を潟に啜りて歎かんや

 

遠い女シベリヤの鴨潟に浮き

 

どぶろくや金切聲の鵙去りて

 

手をこすり血を呼ぶ深田晩稻刈

 

夕霧に冷えてかたまり農一家

 

稻積んで暮れる細舟女ばかり

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