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2013/01/29

西東三鬼 『變身』以後

これを以って僕のブログ・カテゴリ「西東三鬼」では、三鬼の知られた通年の、絶筆に至る主たる作品群を電子化し終えることとなる。


■『變身』以後
(角川書店より昭和五五(一九八〇)年四月に刊行された「西東三鬼読本」収載分)

[やぶちゃん注:ここは底本に、歴史的仮名遣に準拠した朝日文庫「現代俳句の世界9 西東三鬼集」(昭和五九(一九八四)年刊)を用いた。]

昭和三十六(一九六一)年

蜂蜜に透く永片も今限り

耳嚙んで踊るや暑き死の太鼓(ボンゴ)

  山口誓子先生還曆祝句

黑松の鳴り立つ十一月三日

 奧の細道

  福島、しのぶの里

深綠蔭の嚴男來る女來る

  佐藤兄弟墓

燒石の忠義兄弟いまは涼し

[やぶちゃん注:福島県福島市医王寺にある源義経の忠臣であった佐藤継信・忠信兄弟の墓。]

  作並温泉

爺と婆深靑谷の岩の湯に

  多賀城址

哭きつつ消えし老人靑胡桃

夏草の今も細道俳句の徒

  塩竈、佐藤鬼房と行を別つ

男の別れ貝殼山の冷ゆる夏

[やぶちゃん注:佐藤鬼房(おにふさ 大正八(一九一九)年~平成一四(二〇〇二)年)は岩手県釜石市出身の俳人。本名、喜太郎。塩竈町立商業補習学校卒業後、『句と評論』に投句。渡辺白泉の選句を受ける。徴兵を経て、戦後は西東三鬼に師事。山口誓子主宰の『天狼』」同人を経て、昭和六〇(一九八五)年に宮城県塩竈市で『小熊座』を創刊、主宰した(以上はウィキの「佐藤鬼房」に拠る)。「貝殼山」は牡蠣殻の山で固有名詞ではあるまい。]

  松島

夏潮にほろびの小島舟蟲共

  瑞巖寺

一僧を見ず夏霧に女濡れ

  圓通院

蟬穴の暗き貫通ばらの寺

[やぶちゃん注:「圓通院」「えんつういん」と読む。宮城県宮城郡松島町にある臨済宗妙心寺派の寺院。瑞巌寺の南側に隣接している。十九歳で早世した伊達政宗の孫光宗の菩提寺。光宗の霊廟三慧殿の厨子には、慶長遣欧使節を率いた支倉常長がヨーロッパから持ち帰ったバラと、フィレンツェを象徴する水仙が描かれており、この厨子のバラをヒントに先代住職天野明道が、「白華峰西洋の庭」(六千平方メートル余)に色とりどりのバラを植え込んで開放したため、通称、薔薇寺と呼称される。但し、現在はバラの数は少なくなり、境内いたるところに苔を配し、苔の寺として知られるようである(以上はウィキの「円通院」その他を参照した)。]

信じつつ落ちつつ全圓海の秋日

颱風一過髮の先まで三つに編む

[やぶちゃん注:底本では「颱風」の表記は「台風」。過去の作例から「颱風」を採った。]

露けき夜喜劇と悲劇二本立

父と兄癌もて呼ぶか彼岸花

蟲の音に體漂へり死の病

海に足浸る三日月に首吊らば

入院や葉脈あざやかなる落葉

昭和三十七(一九六二)年

 魔の病

入院車へ正坐犬猫秋の風

病院の中庭暗め秋の猫

  手術前夜

剃毛の音も命もかそけし秋

  手術後

赤き暗黑破れて秋の顏々あり

  術後二週間一滴の水も與えられず

這ひ出でて夜露舐めたや魔の病

切り捨てし胃の腑かはいや秋の暮

[やぶちゃん注:前書の「與えられず」の「え」はママ。]

  退院

煙立つ生きて歸りし落葉焚

[やぶちゃん注:ここまでの六句は沖積舎刊の「西東三鬼全句集」によれば、同年『天狼』一月号収載句で、手術から退院は先の句集『變身』の最後に注した、前年十月の出来事。吟詠も、即吟か、前年末にかけての作である。]

縱横の冬の蜜蜂足痿え立て

[やぶちゃん注:底本ではこの句の前に「*」を挟む。この句から「木枯に」までの七句は沖積舎刊の「西東三鬼全句集」によれば、『天狼』二月号収載句。]

降りつもる落葉肩まで頭上まで

病み枯れの手足に焚火付きたがる

犬猫と夜はめつむる落葉の家

枯るる中野鳩の聲の香生訓

ばら植ゑて手の泥まみれ病み上り

  「體内の惡しきものきり捨つべし」靜塔の手紙

木枯にからだ吹き飛ぶ惡切り捨て

神の杉傳ひて下る天の寒氣

ひよどりのやくざ健やか朝日の樹

死後も犬霜夜の穴に全身黑

餠のかびいよいよ烈し夫婦和し

[やぶちゃん注:「いよいよ」の後半は、底本では踊り字「〱」。]

添伏しの陽氣な死神冬日の濱

木枯のひびく體中他人の血

ついばむや胃なし男と寒雀

大寒の富士なり天に楔打ち

寒鴉口あけて呼ぶ火山島

音こぼしこぼし寒析地の涯へ

[やぶちゃん注:「こぼしこぼし」の後半は底本では踊り字「〱」。]

聲要らぬ春の雀等光の子

地震來て冬眠の森ゆり覺ます

ぐつたりと鯛燒ぬくし春の星

春の海近しと野川鳴り流る

海南風女髮に靑き松葉降らす

靑天に紅梅晩年の仰ぎ癖

人遠く春三日月と死が近し

陽炎によごれ氣安し雀らは

鷄犬に春のあかつき猫には死

木瓜の朱へ這ひつつ寄れば家人泣く

春の入日へ豆腐屋喇叭息長し

春を病み松の根つ子も見あきたり

[やぶちゃん注:最後の句は下に『絶筆(三月七日作)』と附す。]

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