一言芳談 九十九
九十九
明遍云、出家遁世の本意(ほんい)は、道のほとり、野べの間にて死せむことを期(ご)したりしぞかしと、如此(かくんごとく)おもひつれば、いかに心ぼそき事にあふとも、一念も人をうらむべからず。それにつけても佛力(ぶつりき)をあふぐべきなり。
〇佛力を、法然上人のをしへにも、臨終の知識はなくとも佛をたのみて往生すべしと侍り。
[やぶちゃん注:Ⅱの大橋氏の注に「一遍上人語録」の巻下から以下のように引用する(恣意的に正字化した)。
わが門弟におきては、葬禮の儀式をとゝのふべからず。野に捨て獸にほどこすべし
「人をうらむべからず」この「べし」は確述若しくは当然の意で、「人を恨むことはないはずである」の謂い。]