祈禱 萩原朔太郎 (「竹」詩想篇)
祈禱
ぴんと光つた靑竹、
そこらいちめん、
ずばずば生えた竹籔の中へ、
おれはすつぱだかでとびこんで、
死にものぐるひの祈禱をした、
まつかの地面の上で、
ぎりぎり狂氣の齒がみをした。
みれば笹の葉の隙間から、まつぴるまの天が光つてゐる。
おれは指をとんがらして、
まつかうからすつぱりと。
[やぶちゃん注:底本の第三巻の「未發表詩篇」(二七三~二七四頁)に載るもの。私の感じる〈「竹」詩想〉の一篇である。]
« 西東三鬼 拾遺(抄)Ⅱ (色紙・短冊・その他より) | トップページ | 金草鞋 箱根山七温泉 江之島鎌倉廻 山之内圓覺寺 »