西東三鬼 拾遺(抄) 昭和二十一(一九四六)年
昭和二十一(一九四六)年
夕風や毛蟲たゆたふ道の上
[やぶちゃん注:同年『現代俳句』九月号所収。]
奈良の道白しとあゆむ夜の梅雨
夜の塔あるべき方や栗の花
ところてん濹東奇譚また讀まむ
嵯峨の道蜥蜴は失せてわが殘る
秋の梵鐘仰ぐや手紙まろめ捨て
魂迎ひひそかに待てる魂ありて
鳴きしざりつつ空蟬とならぶ蟬
夜の桃をひとの愛人指もてむく
奈良の坂暑しドラムを練習す
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