枯木の馬 大手拓次
枯木の馬
神よ、大洋をとびきる鳥よ、
神よ、凡ての實在を正しくおくものよ、
ああ、わたしの盲(めくら)の肉體よ滅亡せよ、
さうでなければ、神と共に燃えよ、燃えよ、王城の炬火(たいまつ)のやうに燃えよ、
ああ、わたしの取るに足りない性の遺骸を棄てて、
暴風のうすみどりの槌のしたに。
香枕(かうまくら)のそばに投げだされたあをい手を見よ、
もはや、深淵をかけめぐる枯木(かれき)の馬にのつて、
わたしは懷疑者の冷(つめ)たい着物をきてゐる。
けれど神樣よ、わたしの遺骸には永遠に芳烈な花を飾つてください。