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2013/02/19

耳嚢 巻之六 桶屋の老父歌の事

 桶屋の老父歌の事

 ある桶や老父、その子に、世の中の人の交(まじは)りを教訓して詠(よめ)る由。
  木に竹の無理はいふともそこがおやいはせて桶やたが笑ふとも

□やぶちゃん注
○前項連関:狂歌シリーズ。標題は岩波のカリフォルニア大学バークレー校版では「桶屋の老商歌の事」とある。
・「木に竹の無理はいふともそこがおやいはせて桶やたが笑ふとも」「木に竹の無理はいふ」は、性質・内容の異った対象を無理矢理繫ぎ合わせるの意の「木 に竹を接(つ)ぐ」の諺の、筋が通らないことを言う、の意であり、また木は桶の本体、竹は箍の素材であるから「桶」の縁語ともなる。「そこがおや」の「そこ」は桶の「底」に掛けてあり、「おや」は親とその職業の「桶屋(おけや)」の意味にも響き合う。「いはせて桶や」は「言はせて置けや」に、「たが笑ふとも」の「たが」は「誰(た)が」と桶の「箍(たが)」を掛け、また、「たが笑ふ」は「箍が笑ふ」で、桶が朽ちて箍が緩んで水漏れする(「箍が笑う」)の意を掛ける。因みに「箍が笑う」の先には、さらに腐食が進んで、箍を締め直したぐらいでは水漏れが止まらず、腐った一部を補修してもまた、別の箇所から水漏れすることを言うところの「桶が笑ふ」を響かせていよう。カラオケ風に訳そう。
――儂は桶屋なればこそ桶尽くしにて候――
♪木に竹を ♪接ぐよな無理を ♪言うとても ♪桶は大事な底(そこ)が親 ♪言わせて桶(おけ)や ♪箍笑(わろ)うても
市井の無名人の狂歌ながら、和歌嫌いの私でも、技巧も歌意も非常に優れた狂歌であると思う。

■やぶちゃん現代語訳

 桶屋の老父の狂歌の事

 ある桶屋の老父、その子に、世の中での人との交わりの教訓として詠んだ由。その歌、
  木に竹の無理はいふともそこがおやいはせて桶やたが笑ふとも

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