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2013/02/06

西東三鬼 拾遺(抄) 昭和九(一九三四)年

昭和九(一九三四)年

 

  横濱風景

 

異人墓地梢の海も雪ぐもる

 

異人墓地雪むらさきに夕づける

 

   *

 

草萌ゆるこみちのカタヒもの食へる

 

   *

 

裸馬ぽくぽく畑は日闌けて葱坊主

 

裸馬ぽくぽく遠に櫟の芽が光り

 

[やぶちゃん注:二句ともに「ぽくぽく」の後半は底本では踊り字「〱」。]

 

裸婦の畫の美き丘と谷春の灯に

 

裸婦の畫の瞳妖しも春の灯に

 

裸婦の畫の薔薇匂ひけむ房に滿つ

 

  椅子ふかく

 

眼に偸む裸婦の圖春の灯を吸へる

 

裸婦の圖の褐(カチ)髮春の灯にみだれ

 

裸婦の圖の美き丘と谷春の灯に

 

もり上りせまる裸婦の圖春の灯に

 

夜の春を裸婦の圖のふと息吹けむ

 

   *

 

鞦韆の美き脚漕げりひたすらに

 

鞦韆に崎の巨船消えしてふ

 

鞦韆ゆ紅の靴降り吾がまへに

 

鞦韆の振子とまれり手をあたふ

 

   *

 

夜の春をめぐる木馬は傷みたり

 

徒らにおほきく妻の石鹼玉

 

黄砂降るあかゞねの月鐡骨に

 

  「にんじん」を詠む

 

[やぶちゃん注:ジュール・ルナールの「ん」であるが、これは恐らくジュリアン・デュヴィヴィエ監督のロベール・リナン主演になるフランス映画「にんじん」(一九三二年)の鑑賞吟と推定する。本邦では、この昭和九(一九三四)年に公開されている(リンク先は私の岸田国士訳の電子テクスト)。初出誌は『走馬燈』の同年六月号であり、「薄月や」までが同誌での同時発表である。ただ、どこまでが『「にんじん」を詠む』の連作かはっきりしないが、「月落ちぬ」の句までは「にんじん」の映像や原作と確かに合致すると私は判断する。]

 

春曉のシーツ濡れをりすべもなし

 

鷓鴣を締むおそるゝ眼かたく閉づ

 

牡丹蔓裾にひきて嫁あそび

 

葡萄呉るゝ大いなる掌の名附親

 

月落ちぬこゝろ觸れたる父と子と

 

蒼澄める朝の空へ松の芯

 

峽深き日はうつうつと杉の花

 

薄月や接木のいのちかよひそむ

 

疫(え)病む子に禍つ闇ぬけ白蛾來ぬ

 

疫病む子はまどろみ白蛾すでにあらぬ

 

熱を病む手足がへんに伸びてゆく

 

熱を病む骨がしだいにやはらかく

 

熱を病むおのれが鳴らす齒の音を

 

   *

 

かのといきまつよひぐさにいまもきく

 

   *

 

白芥子のひそかなる香に眼をつむる

 

疫病む子を窺ふ白蛾闇を負ふ

 

くちふれて新樹の闇に溺れゆく

 

  海濱風景

 

惡童のみな貌美くて濱に古り

 

惡童に羞ぢらふ胸乳波に浸し

 

惡童のくち笛ひしと浪の娘に

 

惡童のコーラス沖に雲の下に

 

惡童らインクの色の沖に去る

 

白きもの海月となりてくつがへる

 

波を出て月光の襯衣ひたと着る

 

   *

 

祭果てし廣場の芥風は秋

 

   *

 

黑煙けふなき空へ踊りの手

 

   *

 

  東北凶作地を憶ふ

 

夜を飢えて覺むるに雪の海あらぶ

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