黄金の闇 大手拓次
黄金の闇
南がふいて
鳩の胸が光りにふるへ、
わたしの頭は釀された酒のやうに黴の花をはねのける。
赤い護謨(ごむ)のやうにおびえる唇が
力(ちから)なげに、けれど親しげに内輪な歩みぶりをほのめかす。
わたしは今、反省と悔悟の闇に
あまくこぼれおちる情趣を抱きしめる。
白い羽根蒲團の上に、
産み月の黄金(わうごん)の闇は
惱みをふくんでゐる。
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