しなびた船 大手拓次
しなびた船
海がある、
お前の手のひらの海がある。
苺(いちご)の實の汁を吸ひながら、
わたしはよろける。
わたしはお前の手のなかへ捲きこまれる。
逼塞(ひつそく)した息はお腹(なか)の上へ墓標(はかじるし)をたてようとする。
灰色の謀叛よ、お前の魂を火皿(ほざら)の心(しん)にささげて、
淸淨に、安らかに傳道のために死なうではないか。
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しなびた船
海がある、
お前の手のひらの海がある。
苺(いちご)の實の汁を吸ひながら、
わたしはよろける。
わたしはお前の手のなかへ捲きこまれる。
逼塞(ひつそく)した息はお腹(なか)の上へ墓標(はかじるし)をたてようとする。
灰色の謀叛よ、お前の魂を火皿(ほざら)の心(しん)にささげて、
淸淨に、安らかに傳道のために死なうではないか。