大手拓次 宿命の雪 自序に代へて
宿命の雪
自序に代へて
ほのほはそのかげをおかしてたたずみ、
みどりの犬をはなち、
合掌し 合掌し みづにおぼれる。
大正十五年九月 拓次
[やぶちゃん注:次の次の頁に拓次の死の翌日の死顔の逸見享によるデッサン画。左下に「昭和九年 四月十九日 享」とある。これは画家逸見享(へんみたかし)氏(明治二八(一八九五)年~昭和一九(一九四四)年)で、和歌山県出身。中央大学卒業後、ライオン歯磨意匠部に勤務する傍ら、木版画を始め、大正八(一九一九)年の第一回日本創作版画協会展に入選、日本版画協会でも活躍した。「新東京百景」を分担制作、友人であった大手拓次の詩集の装丁・編集も彼が手がけた(講談社「日本人名大辞典」の解説に拠る)。本詩集の編集・装幀も彼の手になる。]