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2013/02/13

西東三鬼 拾遺(抄) 昭和十五(一九四〇)年

昭和十五(一九四〇)年

ともすれば寒夜わが口唾を吐く

  獨樂

きちがひの少女なり獨樂廻り澄む

冬蓄薇きちがひの貌に向きひらく

冬の鏡にきちがひ少女のかくすところ

寒き窓きちがひ少女うしなはず

[やぶちゃん注:以上四句は同年『俳句研究』二月号。後の「現代俳句・第三巻」(昭和一五(一九四〇)年六月刊)の中の「西東三鬼集『空港』」に所収された。]

  鴉よ

鵠よ荒園の風ふたりにも吹く

突く女冬の大腸を足元に

冬園に突けり十箇の爪光る

枯園に一滴の涙光り落つ

[やぶちゃん注:以上四句、『俳句研究』二月号所収のもの。]

  牡蠣

空港なりライタア處女の手にともる

戀ふ寒し身は雪嶺の天に浮き

計算の零(ゼロ)るいるいと牡蠣の前

牡蠣に酢を喇叭隊來て消え行けば

牡蠣啜りをはり紙幣を數へゐる

[やぶちゃん注:以上五句は『天香』四月号所収のもの。]

  鯉

地下室の鯉黑し見つゝ憂き男女

女の前に戻し冬の胡瓜嚙む

處女の背に雪降り硝子夜となる

手を別つ寒き竝木は根の如し

寒夜明るし別れて少女馳け出だす

冬景をまつすぐに女風と來る

寒い橋を幾つ渡りしと數ふ

人と並び落暉北風身にひびく

別離の顏冬の落曙に向き背く

  夜間飛行

春のホテル夜間飛行に唇(くち)離る

空港に兄と花束夜明けくる

少女指せば晝月ありぬ春の終

中學生屋根に哄笑し春終る

初夏太陽點々道の鋲にある

[やぶちゃん注:以上十四句は昭和一五(一九四〇)年六月刊の「現代俳句・第三巻」の中の「西東三鬼集『空港』」に所収された昭和十五年分から。]

  五月の河

半身に五月烈しく河臭ふ

河暑し油と友の顏流る

河黑し暑き群集に友を見ず

暑き河に憤怒の唾を吐き又吐く

唾滴れ怒れる汗は黑き河に

[やぶちゃん注:以上五句は『天香』六・七月合併号所収。]

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