西東三鬼 拾遺(抄)Ⅱ (色紙・短冊・その他より)
拾遺(やぶちゃん抄)Ⅱ
[やぶちゃん注:これは朝日文庫「現代俳句の世界9 西東三鬼集」(昭和五九(一九八四)年刊)を底本とし、そこで都市出版社昭和四六(一九七一)年刊の大高弘達・鈴木六林男・三橋敏雄編「西東三鬼全句集」に載るところの色紙・短冊・その他からの抄出句を「拾遺二」として掲げたもの全十九句の中から、私の琴線に触れるものを抄出したが、本コンセプトに随い、恣意的に正字化した。]
昭和二十二(一九四七)年
葱坊主みな默り立つ朝の雨
昭和二十三(一九四八)年
蝶在れといへば蝶在る杖の先
炊煙に涙し逃れ夕櫻
昭和二十六(一九五一)年
虹消えし方へのそのそ歩き出す
[やぶちゃん注:「のそのそ」の後半は底本では踊り字「〱」。]
昭和三十(一九五五)年
ひらひらと春の夜氣入る首飾
[やぶちゃん注:「ひらひら」の後半は底本では踊り字「〱」。]
春の星恍惚の手を別ちけり
昭和三十六(一九六一)年
くちつけてくずれて死なむ天の川
昭和三十七(一九六二)年
元日の鳩桃色の脚いそがし