なまけものの幽靈 大手拓次
なまけものの幽靈
ある日なまけものの幽靈が
感奮して魔王の黑い黑い殿堂の建築に從事した。
ひとあたり手をつけてみると
妙にをかしくてつてきて、またどうやら倦(あ)き倦(あ)きしてしまつた。
しかし、仕事をつづけるといふことが怪しく殘りをしかつたので
靑い斧をふりあげては働いた。
そして、炎のやうに冥想の遺骸が質朴な木造車にのせられて通る。
黑い殿堂は休むことなく
ふだんの事のやうに工事が進められてゐる。
なまけものの幽靈は今更のやうにあたり前の誇りをみせびらかしたくなつた。
――みると幽靈の足には草色の瘤が出來てゐた。