河原の沙のなかから 大手拓次
河原の沙のなかから
河原の沙のなかから
夕映の花のなかへ むつくりとした圓いものがうかびあがる。
それは貝でもない、また魚でもない、
胴からはなれて生きるわたしの首の幻だ。
わたしの首はたいへん年をとつて
ぶらぶらとらちもない獨りあるきがしたいのだらう。
やさしくそれを看(み)とりしてやるものもない。
わたしの首は たうとう風に追はれて、月見草のくさむらへまぎれこんだ。
*
これを以って「陶器の鴉」の章を終わる。
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河原の沙のなかから
河原の沙のなかから
夕映の花のなかへ むつくりとした圓いものがうかびあがる。
それは貝でもない、また魚でもない、
胴からはなれて生きるわたしの首の幻だ。
わたしの首はたいへん年をとつて
ぶらぶらとらちもない獨りあるきがしたいのだらう。
やさしくそれを看(み)とりしてやるものもない。
わたしの首は たうとう風に追はれて、月見草のくさむらへまぎれこんだ。
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これを以って「陶器の鴉」の章を終わる。