撒水車の小僧たち 大手拓次
撒水車の小僧たち
お前は撒水車をひく小僧たち、
川ぞひのひろい市街を悠長にかけめぐる。
紅や綠や光のある色はみんなおほひかくされ、
Silence(シイランス) と廢滅(はいめつ)の水色の色の行者のみがうろつく。
これがわたしの隱しやうもない生活の姿だ。
ああわたしの果てもない寂寥を
街のかなたこなたに撒きちらせ、撒きちらせ。
撒水車の小僧たち、
あはい豫言の日和が生れるより先に、
つきせないわたしの寂寥をまきちらせまきちらせ。
海のやうにわきでるわたしの寂寥をまきちらせ。
[やぶちゃん注:「撒水車」は「さつすいしや(さっすいしゃ)」と読む。散水車に同じであるが、読みに注意されたい。]