冬 萩原朔太郎
冬
つみとがのしるし天にあらはれ、
ふりつむ雪のうへにあらはれ、
木木の梢にかがやきいで、
ま冬をこえて光るがに、
をかせる罪のしるしよもに現はれぬ。
みよや眠れる、
くらき土壤にいきものは、
懺悔の家をぞ建てそめし。
[やぶちゃん注:詩集「月に吠える」初版(大正六(一九一七)年二月感情詩社・白日社出版部共刊)より。冒頭の「竹とその哀傷」詩群の八番目。この詩には最早、神による「淨罪」はないのではないか? あるのはただ、神なき「懺悔」のみ、なのではあるまいか?]