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2013/03/01

耳嚢 巻之六 産後髮の不拔呪の事

 産後髮の不拔呪の事

 

 婦人出産後、夥敷(おびただしく)髮の拔るものあり。産濟て、枕にかゝり候節、髮の内ひよめきといえる所へ生鹽(なまじほ)を聊か置(おく)ときは、毛不拔事(ぬけざること)妙の由。又一法に、出産後、いたゞきを、毛ぶるひを以て震ふまねなせば、是又毛拔候事無之(これなき)由。

 

□やぶちゃん注

○前項連関:なし。定番の呪(まじな)いシリーズ。

・「不拔呪」「ぬけざるまじない」と読む。

・「婦人出産後、夥敷髮の拔るものあり」分娩後脱毛症という。「女性薄毛対策室」管理になるHP内の分娩後脱毛症の原因と対策ページによれば、『分娩後脱毛症とは、その名の通り、出産後に起こる女性特有の脱毛症のことで』、出産後二~三ヶ月後に『起こることが多く、一度にかなりの量の髪が抜けるので、このまま薄毛になってしまうのではと恐怖を覚える方も少なく』ないとある。『しかし、分娩後脱毛症は一部例外を除けば、自然現象の一環なので、あまり過度に心配する必要はないと言われて』いるとする。そのの原因については以下のように解説されてある。『女性は妊娠した時から出産に至るまで、徐々に卵胞ホルモン』であるエストロゲン『の分泌量が増える傾向にあ』るが、『エストロゲンには髪の発毛を行っている毛母細胞や毛乳頭を活性化させる作用があり、いつもより髪が伸びるスピードが』加速され、『さらに、女性ホルモンの作用で、抜け毛を誘発する男性ホルモンの働きが抑制され、髪が抜けにくくなる』。この二つの作用により、実は『妊娠中は髪が抜けにくく、伸びやすい状態となり、一時的に髪のボリュームがアップ』する。ところが、『出産するとホルモン分泌量が元に戻るため、一時的に増加していた髪が抜け落ち、薄毛となってしまう』ことを主因とするとある。『一時的に乱れたホルモンバランスは時間の経過とともに正常に戻るため』、通常ならば半年から一年も経てば薄毛症状も快方に向かうのであるが、『女性ホルモンとは別の理由、たとえば授乳による栄養不足や、育児疲れによるストレスなどを原因とした薄毛は、放っておいても改善することは』なく、こうした状態に至った『場合は婦人科を受診してみる』ことを勧める、とある。妊婦の方、これから妊婦になられるかもしれない方のために注しておく。

・「枕にかゝり候節」これは坐産(坐った状態で出産する恐らく縄文時代以来の本邦の古来からの出産方法)で分娩後に初めて横臥する際のことを言っている。三重県四日市市羽津地区お公式HP『羽津の昔「人生儀礼」』に、『出産することを「まめになる」といった。出産は、納戸などの薄暗い部屋で行なった。布団の上へ渋紙を敷き、更にその上へ藁灰を入れた「灰布団」を重ね、そこヘペタンと腰を下ろして座り、天井から吊された紐につかまって出産した。いわゆる「座産」である。現在のように寝たままの姿勢でお産をするようになったのは、大正末期から昭和の初めにかけて以降のことであり、それまでは全て座産で』、『妊婦が「ケづく」、つまり陣痛が始まると「抱き女」という予め頼んであった人がきて、天井から吊した紐につかまった妊婦を背後から抱きかかえ、腹の上部をしめつけるようにして、妊婦を励ましたり、いきませたりした。もちろん、この時には、「とりあげ婆さん」も来ていて、出産の介助に当たっていた。お産にあたっては、妊婦が陣痛に苦しんだあげく、障子の桟が見えなくなるくらいにならないと子供は生まれてこないといった』とある。リアルな貴重な記録である。

・「ひよめき」前頭部。通常はこう呼称した場合、乳児の頭頂部前方(おでこの髪の生え際辺りの中央部)にある頭蓋骨の隙間部分を言うが、ここではそれを援用して前額部分をかく呼称しているものと思われる(産婦でもあり関係も深いことからであろう)。医学的には大泉門と呼び、乳児のおでこの正中線を頭頂部に向かって触れてゆくと、頭髪の生え際より少し上の部分に菱形をした柔らかいぷよぷよした部分のことを指す。これは乳児の頭蓋骨の発達が未だ十分でないために生じている複数の頭骨(頭蓋骨は左右前頭骨・左右頭頂骨及び後頭骨の五枚から構成されている)間の縫合部にある比較的大きな隙間(ブレグマ(Bregma):矢状縫合と冠状縫合の交点のこと。)である。

・「生鹽」結晶の粗い精製したり煎ったりしていない塩。

・「毛ぶるひ」「毛篩」で、粉などを篩(ふる)うために用いる目の非常に細かい篩(ふるい)。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 産後に髪の毛が抜けぬようにする呪い(まじな)いの事

 

 婦人の出産後、夥しく髮の抜くる者があるが、こうならなぬようにするためには、坐産が済んで後、初めて横に臥すという際に、額の前髮の生え際のところ――俗に幼児の「ひよめき」と呼んでおるところで御座る――へ、粗塩(あらじお)を少しばかり据えおくならば、これ、毛が抜けなくなること、まっこと、絶妙なる由にて御座る。

 また、今、別の一法としては、同じく出産後に、頭の頂きに於いて、厨(くりや)で用いる毛篩(けぶるい)を以って、これを篩(ふる)う真似を致さば、これまた、毛が抜けるようなことは、これ、一切ないとのことで御座る。

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