鬼城句集 春之部 地理
地理
春山 春山や松に隱れて田一枚
春山や家根ふきかへる御ン社
山笑ふ 稚子達に山笑ふ窓を開きけり
春水 大釜に春水落す筧かな
眞菰生えて春水生えて到ること早し
苗代 苗代にひたひた飮むや烏猫
[やぶちゃん注:底本では「ひたひた」の後
半は踊り字「〱」。]
竹切れに髮の毛つけて苗代田
[やぶちゃん注:全くの勘でしかないが、こ
竹枝に附けた髪の毛というのは、豊作祈願
の予祝行事ではなかろうか? 識者の御教
授を乞うものである。]
苗代を作りて伐るや楢林
春の川 山の日のきらきら落ちぬ春の川
[やぶちゃん注:底本では「きらきら」の後
半は踊り字「〱」。]
春川の日暮れんとする水嵩かな
春川や橋くゞらする帆掛舟
氷解 とけて浮く氷の影や水の底
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