さくら貝、ふたつ重ねて海の趣味、いづれ深しと笑み問(と)はれけり。 萩原朔太郎
さくら貝、ふたつ重ねて海の趣味、いづれ深しと笑み問(と)はれけり。
[やぶちゃん注:前橋中学校校友会雑誌『坂東太郎』第四十二号(明治三八(一九〇九)年七月発行)に「萩原美棹」の筆名で所収された「ゑかたびら」と題する十二首連作の掉尾。当時、朔太郎満十八歳(朔太郎の誕生日は十一月一日)。後に第六高等学校『校友会誌』(明治四一(一九〇八)年十二月号)には、「美棹」の署名に「水市覺有秋」の題の七首の四首目に配されて、
櫻貝二つ竝べて海の趣味いづれ深しと笑み問はれけり
と改稿されている。短歌を解さない私ではあるが(であるが故に、というべきであろう)初出形が断然よいと思う。]
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