鬼城句集 春之部 蠶
蠶 菜の花に煤掃をする飼家かな
口腫れて桑にもつかずお蠶休
[やぶちゃん注:「お蠶休」は「おかいこやす
み」と読む。これは蚕が脱皮をする間を言
い、休眠して桑を食べない期間のことであ
る。これについては平成二十二年度総務省
「地域ICT利活用広域連携事業」に採択さ
れているプラットフォーム構築事業のウェブ
れば、春蚕(はるご)・夏蚕・秋蚕・晩秋蚕
(ばんしゅうさん)・晩々秋蚕(ばんばん
しゅうさん)と五回の掃立(はきた)て(孵
化した蚕を蚕座に移して飼育を開始する作業。
羽箒をもって毛蚕を掃き下ろすことからかく
言う)があるが、蚕があがるまでには「お蚕
休み」がそれぞれ四回あるとし、このお蚕休
みの折りには、『餅・ぼたもち・赤飯・まん
じゅう等を作り、疲れた体をいたわります。
しかし、この頃はお蚕が休んでも農繁期にあ
たり九月末まで忙しくお蚕に追われます』と
ある。]
いさゝかの蠶してゐる渡守