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2013/03/12

「相棒」season9第8話「ボーダーライン」という救い難い悲哀

先日、「相棒」season9第8話「ボーダーライン」を見た(脚本・櫻井武晴 監督・橋本一)。
実に救いのない話である。ネタバレを含むが、偽装殺人(殺人ではない)という点に於いてまず「相棒」の中でも特異である。さる方のブログには、米沢守を演じる六角精児氏が、「長いこと『相棒』に携わってきたが、こんな『しみったれた』話ははじめてだ」と述べたのも、「しみったれ」ているかどうかは別として、大方の賛同を得そうな評言ではある(その方は本作を「相棒」の一篇である必要性さえない作品として斬って捨てている)。
さればこそ――この特異さ故に――開いた口が塞がらなくなって裏返ってしまう超偶然性と階段落下で美事に殺される被害者の多い「相棒」世界の中にあって――寧ろ、あり得るかもしれない、虫唾の走るような慄然さとリアルさを持つ特異点を形成して――僕にとっては大いに面白い(確実に多くの視聴者の記憶に拭い難い不快なシミとして残ってしまうという点に於いて)、絶望的にダークな作品に仕上がっており――僕は――頗る附きで気に入った。
何よりも――テツテ的に「ついていない」主役柴田貴史を演じる山本浩司君の演技が素晴らしい。
僕は彼をつげ義春原作山下敦弘監督の「リアリズムの宿」で見ていた。残念ながら、この作品に就いてはかつて「家出娘だけがいい」で低評価を下さざるを得なかったのであるが、山本浩司君を通底器として、この「相棒」が、僕の中に、ある強烈な反射作用を齎したのであった。
即ち――「リアリズムの宿」が、「つげ的世界」の持つ『毒と孤独の悲哀のすべての核心が』『完膚なきまでに』『致命的に抜け落ちてい』たのに対して、この「相棒」の山本浩司君演じる「柴田貴史」なる人物が、恐ろしいまでに、「つげ的世界」の住人として屹立していたからである。――いや――実は柴田貴史は「つげ的人物」を突き抜けてしまってさえいる。つげの主人公は、その悉くが――柴田貴史よろしく「無能の人」であるが――彼らはしかし――決して自死はしない――からである。
現代の救い難い「一言芳談」ならぬ「一言怪談」の哀しい隣人こそが――この柴田貴史であった。
そして、そうした稀有の役を山本浩司君は実に悲喜劇的(現実的悲惨はしばしば喜劇的でさえある)に演じ切ったと僕は思うのである。
「ボーダーライン」……一見の価値あり……但し、気持ちがどん底の時に見ると……あなたも柴田貴史になってしまう……かも知れぬ……

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