「思ひ出」と幼年心理 萩原朔太郎
本日は父の手術に向けての検査に付き添うによって、これを以って暫く閉店と致す。
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「思ひ出」と幼年心理
雪の降る夜の願人坊や、黑ン坊の子供や、生膽取りの幻想やによつて、絶えず物におびえ泣いてゐる幼兒の心理を、官能的でイマヂナチヴな言葉によつて、美しくもリリカルな詩に表現した北原白秋の「思ひ出」は、おそらくこの種の詩集として、世界に稀有な文獻であると共に、兒童文學の研究者にとつて、最も貴重な參考書であるだらう。なぜなら詩人の直覺する眞理は、學者の抽象的な推理以上に、心の内奥する祕密の本質を直視してるから、いかなる學者にもまさつて、白秋は兒童心理學の大家であつた。
[やぶちゃん注:昭和一五(一九四〇)年七月創元社刊のアフォリズム集「港にて」の「個人と社會」の冒頭にある「1 夢」の八番目、前掲の「幼兒の夢」の次に配されている。下線部は底本では傍点「ヽ」。「個人と社會」の、底本の独立標題ページの下には、確かに「1 夢」とあるのだが、これは実は本文にはない。従ってどこでこの「1 夢」のパートが終わるのかは、実は示されていないのであるが、次の「2 女性――家庭――結婚――sex」という標題内容と、この『「思ひ出」と幼年心理』の次のアフォリズム「女の悲しさ」を読む限りに於いて、間違いなく「1 夢」はこの『「思ひ出」と幼年心理』を以って終了していることが分かる。]
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