雪をのむ馬 大手拓次
球形の鬼
雪をのむ馬
自然をつくる大神(おほかみ)よ、
まちの巷(ちまた)をくらうする大氣のおほどかなる有樣、
めづらしい幽闇の景色をゑがいて、
その したしたとしたたる碧玉(サフイイル)のつれなさにしづみ、
ゆたかにも企畫をめぐらすものは、
これ このわたしといふ
靑白い幻の雪をのむ馬。
[やぶちゃん注:下線部は底本では傍点「ヽ」。最終行、「靑白い/幻の//雪をのむ馬」と詠む時、恐ろしいまでに私の琴線が倍音となって鳴り響く。]
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ここより「球形の鬼」の章に入る。