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2013/03/03

耳嚢 巻之六 河骨蕣生花の事

 河骨蕣生花の事

 

 河骨(かうほね)は、投(なげ)入れ又は立花(たてばな)にするに、水あがりかね、暫しの内に花のぢくくぢけ、葉も又しぼみぬるものなり。或諸候のかたりけるは、河骨を生(いけ)んと思ふには、まづ軸にもつ水をしぼりて一夜水につけ置(おけ)ば、水あがりてたもつ由。又一法に河骨の軸へ、小刀目(こがたなめ)を數ケ所へ入れて生花にするに、暫くたもつとや。蕣(あさがほ)は、活花(いけばな)はさらなり、垣に咲(さけ)るも、日影にしぼむ事いとはかなし。晝よりさきの客には、蕣を花にいけん事、かたき事なり。爰に一術ありと、人のかたりぬ。朝顏の花、あすはひらかんとおもふつるをとりて、つぼみをぬれ紙にて包(つつみ)、つるともに水に入て、客來らんと思ふ刻限に紙をとり活(いけ)ぬれば、程よく咲(さき)て暫しはたもつ事なりとぞ。

 

□やぶちゃん注

○前項連関:これは呪(まじな)いではない、極めてプラグマティクな生け花法であるが、当時の性質としては呪いと変わらないものであったはずであるから、強く連関すると言ってよいであろう。コウホネのケースは、現在の花首まで水につける深水法と呼ばれる水揚げに適い、特に維管束内のバクテリア等を含んだ水を絞り出すことで効果があるように思われ、アサガオの方の手法は水を含ませた新聞紙で包んで水揚げを行う手法に等しい。水揚げには温水や熱水を使うこともあり、かなり萎れた菊などでもこの方法で回復する(以上の水揚げ法については、個人のHP「飛鳥村のヘングリッシュガーデン」内の切り花を長持ちさせる方法を参考にさせて頂いた)。

・「河骨」双子葉植物綱スイレン目スイレン科コウホネ Nuphar japonicum。水生多年生草本。浅い池や沼に自生する。参照したウィキの「コウホネ」によれば、『根茎は白くで肥大しており、やや横に這い、多数の葉をつける。葉は水中葉と水上葉がある。いずれも長い葉柄とスイレンの葉の形に近いが、やや細長い葉身をつける。水中葉は薄くてやや透明で、ひらひらしている。冬季には水中葉のみを残す。暖かくなるにつれ、次第に水面に浮く葉をつけ、あるいは一気に水面から抽出して葉をつける。水上葉はやや厚くて深緑、表面につやがある。花期は』六月~九月頃で、長い花茎の先端に一つだけ『黄色い花を咲かせる』。『日本、朝鮮半島に分布する。浅い池によく見かけるが、流れの緩い小川に出現することもある。根茎が骨のように見え、コウホネ(河骨、川骨)の名の由来となっている』とある。属名「ヌーファ」はアラビア語由来で同種(の花)を指す語であるらしい。

・「投入れ」「抛げ入れ」とも書く。生け花で自然のままの風姿を保つように生けること。また、その花の意。室町末期に始まる。

・「立花(たてばな)」「りつか(りっか)」と読んでもよい。花や枝などを花瓶に立てて生けることであるが、狭義には生け花の型の一つとして江戸前期に二世池坊専好(いけのぼうせんこう)が大成した最初の生け花様式をも言う。真とよばれる役枝を中央に立て、それに七つの役枝(七つ道具。真・副(そ)え・受け(請け)・正真(しょうしん)・見越し・流枝(ながし)・前置きの七つ。のちに九つ道具となった)をあしらって全体として自然の様相をかたどったもの。現在、池坊に伝承されている。

・「蕣」双子葉植物綱ナス目ヒルガオ科ヒルガオ亜科サツマイモ属アサガオ Ipomoea nil。因みに属名はギリシャ語の“ips”(芋虫)+“homoios”(似た)で、物に絡みついて這い登る性質に由来する。種小名“nil” はアラビア語由来で藍色の意。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 河骨(こうほね)と朝顔を生花とする際の水揚げ方法の事

 

 河骨は、投げ入れ又は立て花(ばな)にするにしても、水がなかなか揚がらず、生けても暫くするうちに、花の軸が傷み腐って、葉もまた萎んでしまうものである。

 とある華道を嗜まるる御大名のお話によれば、河骨を生けようと思う場合には、まず、軸に含まれている水分を十分に絞り出した上、一夜(ひとよ)、水に漬けおいたものを用いると、これ、しっかりと水が揚がって永く保つとの由で御座った。

 また一法には、河骨の軸へ、小刀で切れ目を數箇所入れて生け花にすれば、普通より永く保つ、とも仰せられて御座った。

 更に――朝顔は、活け花はもとより、垣根に咲いておるものでも、日が昇って光が射し始めると急速に萎んでしまう、大層、儚(はかな)いもので御座る。

 昼より後の客の接待の際に、朝顔を生け花に致すというは、これ、非常に難しいことであることは言を俟たぬもので御座ろう。

 ところが、ここに一つの方法がある、と、さる御仁が話して呉れて御座った。

 それは、朝顏の花で明日は開くであろうと思しいものを蔓ごと採って、その蕾(つぼみ)を濡れた紙にて包み、蔓と一緒に水に入れて、客が来たらんとする刻限に合わせて紙を取り除いて活ければ、これ、来客中にほどよく咲いて、午後であっても暫くの間は開花を保つことが出来るとのことで御座った。

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