船室から 萩原朔太郎 (詩集「宿命」版)
船室から
嵐、嵐、浪、浪、大浪、大浪、大浪。傾むく地平線、上昇する地平線、落ちくる地平線。がちやがちや、がちやがちや。上甲板へ、上甲板へ。鎖(チエン)を卷け、鎖(チエン)を卷け。突進する、突進する水夫ら。船室の窓、窓、窓、窓。傾むく地平線、上昇する地平線。鎖(チエン)、鎖(チエン)、鎖(チエン)。風、風、風。水、水、水。船窓(ハツチ)を閉めろ。船窓(ハツチ)を閉めろ。右舷へ、左舷へ。浪、浪、浪。ほひゆーる。ほひゆーる。ほひゆーる。
[やぶちゃん注:詩集「宿命」(昭和一四(一九二九)年創元社刊)より。「散文詩」という総副題の中にある一篇。]

