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2013/03/06

鬼城句集 春 時候

 春之部

 

  時候

 

春の日  春の日や高くとまれる尾長鷄

     あかあかと大風に沈む春日かな

春の夜  春の夜や灯を圍み居る盲者達

     春の夜や泣きながら寐る子供達

     春の夜や上堂したる大和尚

餘寒   春寒や隨身門に肥車

     竹うごいて影ふり落す餘寒かな

     春寒や掘出されたる蟇

     大寺に沙彌の爐を守る餘寒かな

     鏈して小舟つなげる餘寒かな

     [やぶちゃん字注:「鏈」は「鎖」と同義で、

      「くさり」と訓じていよう。]

     仙人掌の角の折れたる餘寒かな

     山寺に菎蒻賣りや春寒し

日永   遲き日や家業たのしむ小百姓

     遲き日の暮れて淋しや水明り

     遲き日の暮るゝに居りて灯も置かず

     遲き日やから臼踏みの臼の音

暖    遠山に暖き里見えにけり

     石暖く犬ころ草の枯れてあり

     暖く西日に住めり小舍の者

     暖や馬つながれて立眠り

長閑   長閑さや大きな緋鯉浮いて出る

     長閑さや鷄の蹴かへす藁の音

     長閑さやてふてふ二つ川を越す

     麥畑にわら灰打ちて長閑かな

     曳馬の歩き眠りや長閑なる

     ひとり歩く木曾の荷牛の長閑かな

春の宵  小百姓の飯のおそさよ春の宵

     美しき娘(こ)の手習や宵の春

     女夫して實家(さと)に遊ぶや春の宵

朧    朧夜や天地碎くる通りもの

     大門に閂落す朧かな

行春   行春や机の上の金蘭薄

     [やぶちゃん注:「金蘭薄」は「きんらんぱく」

      と読み、単子葉植物綱ラン目ラン科シュンラン

      Cymbidium goeringii の品種の一。]

     何燃して天を焦すぞ暮の春

     淺間山春の名殘の雲かゝる

     行春や畑ヶにほこる葱坊主

     行春や淋しき顏の酒ぶくれ

     春行くと娘に髮を結はせけり

     亡き人の短尺かけて暮の春

     行春や夕燒したる餘所の國

     行春や看板かけて賃仕事

     草の戸に春の名殘の倡和かな

     春惜む同じ心の二法師

二月   黑うなつて茨の實落つる二月かな

     西行の御像かけて二月寺

冴返る  冴返る庵に小さき火鉢かな

     冴返る川上に水なかりけり

夏近し  夏近き曾我中村の水田かな

     [やぶちゃん注:「曾我中村」は小田原市国府津

      の北の、現在の曽我別所梅林の東北にある六

      本松跡周辺山彦山山麓を指す地名と思われる。

      ここでの句としては、

      ほととぎす鳴き鳴き飛ぶぞいそがわし 芭蕉

      人の知る曾我中村や靑嵐       白雄

      雨ほろほろ曽我中村の田植えかな   蕪村

      といった先行作がある。]

     夏近き近江の空や麻の雨

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