一言芳談 一二六
一二六
聖光上人云、凡夫は歷緣對境(りやくえんたいきやう)の名利をば可發(おこすべき)なり。但し、往生の解行(げぎやう)につきては一向(いつかう)、眞實なるべし。
〇歷緣對境の名利、緣にふれ、境に對して、名聞利養なり。それはさのみ往生の障にあらず。
[やぶちゃん注:「歷緣對境」Ⅱの大橋氏注に、『原意は行住坐臥の縁にふれて、色声などの認識の対象に対することをいう』とある。現世の不可避の欲望を指していよう。
「可發なり」この「べき」は適当である。そうした現世に於いて、しがらみとしての名利に関心を持つのは構わない、必然的に仕方がないことだ、と言っているのである。
「解行」仏教の教理の理解と実践的な修行。
「一向、眞實なるべし」Ⅱで大橋氏は、『ひたすらまことの心でなくてはなりません』と訳す。往生決定だけは――誠心でなくてはならぬ/誠心である、と言っているのである。]