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2013/03/07

鬼城句集 春之部 人事

  人事

 

治聾酒  治聾酒の醉ほどもなくさめにけり

     治聾酒や靜かに飮んでうまかつし

     [やぶちゃん注:「治聾酒」「ぢろうしゆ(じ

      ろうしゅ)」と読む。春の社日(立春から数

      えて五番目の、春分に最も近い戊戌(つち

      のえいぬ)の日に当たる)に土地の神に供

      える酒を言い、この日に酒を飲むと耳の不具

      合が治るという。「大辞泉」の例文はこの鬼

      城の冒頭の句である。御承知のことと思われ

      るが、鬼城は耳が不自由であった(若年期の後

      天的な耳の疾患によるものらしい)。]

畑打   小男や足鍬(えんぐは)踏みこむ二押三押

     [やぶちゃん注:「足」を「えん」と読むのは

      不詳。識者の御教授を乞うものである。]

     先祖代々打ち枯らしたる畑かな

     畑打のよき馬持ちて踏ませけり

目刺   束修の二把の目刺に師弟かな

     [やぶちゃん注:「束修」は「束脩」の誤りで

      あろう。「束脩」は「そくしう(そくしゅ

      う)」と読み、古く中国で師に入門する際の

      贈物とした束ねた干し肉のことで、転じて、

      諸師匠に入門する際の持参する謝礼を言う。]

     目刺あぶりて賴みある仲の二人かな

種蒔   種蒔いて暖き雨を聽く夜かな

     種蒔や繩引き合へる山畑

寒食   寒食や冷飯腹のすいて鳴る

     [やぶちゃん注:「寒食」は「かんじき」また

      は「かんしよく」と読み、冬至から一〇五

      日目の節気。古代中国の習慣で、この日は

      火気を用いずに冷たい食事をしたことによ

      る。由来ははっきりしないがこの時期は風

      雨が激しいことから火災を防ぐためとも、

      また、一度火を断って新しい火で春を呼び

      込む再生儀礼とも言われる。]

北窓開く 北窓をこぢ放しけり鷄の中

凧    谷間に凧の小さくあがりけり

     大凧や草の戸越の雲中語

初午   初午や神主もして小百姓

     初午や枯木二本の御

雛    蕎麥打つて雛も三月五日かな

     雛の間やひたとたて切る女夫事

春の灯    思ひわづらふことあり

     春の灯や搔きたつうれどもまた暗し

摘草   摘草や帶引きまはす前後

     摘草や苽市たちて二三軒

     [やぶちゃん注:「苽」はマコモのことだが、

      これは「笊市」(ざるいち)の誤植ではあ

      るまいか。]

芋植うる 芋種の古き俵をこぼれけり

     芋植ゑて土きせにけり一つ一つ

     [やぶちゃん注:底本では「一つ一つ」の後

      半は踊り字「〱」。]

     芋植えゑて梶原屋敷掘られけり

     [やぶちゃん注:これを鎌倉の吟とするペー

      ジを見かけたが、梶原景時の所領は相模国

      一宮(現在の寒川町)や初沢城(現在の八

      王子市初沢町)などにもあって梶原屋敷と

      呼称する場所は他にも多く、同定する根拠

      に疑問がある。]

櫻餠   たんと食うてよき子孕みね櫻餠

踏靑   靑を踏む放參の僧二人かな

     [やぶちゃん注:「踏靑」は「たふせい(とう

      せい)」と読む。中国で清明節前後(四月五

      日前後)に郊外へと遊んだことを言った。

      春の青草を踏んで遊ぶから、春の野遊びの

      意となった。「放參」は「はうさん(ほうさ

      ん)」と読み、禅寺で夜の参禅から修行僧を

      放免することを言う。]

藪入   藪入に交りて市を歩きけり

針供養  山里や男も遊ぶ針供養

干鱈   干鱈あぶりてほろほろと酒の醉に居る

     [やぶちゃん注:底本では「ほろほろ」の後

      半は踊り字「〱」。]

彼岸   虎溪山の僧まゐりたる彼岸かな

     [やぶちゃん注:「虎溪山」は岐阜県多治見市

      にある臨済宗南禅寺派の寺虎渓山永保寺

      (こけいざんえいほうじ)のこと。]

野燒   野を燒くや風曇りする榛名山

     野を燒くやぼつんぽつんと雨到る

     [やぶちゃん注:底本では「ぼつんぽつん」

      の後半は踊り字「〱」。]

接木   壁に題して主人を誹る接木かな

     接木してふぐり見られし不興かな

     柿の木に梯子をかける接木かな

節分   思ひ出して豆撒きにけり一軒家

草餠   草餠に燒印もがな草の庵

菊根分  妹が垣伏見の小菊根分けり

     菊根分呉山の雪の覺束な

     [やぶちゃん注:「呉山の雪」は南宋の魏慶之

      撰「詩人玉屑(ぎょくせつ)」に採られてい

      る唐代の詩僧釈可士(かし)の「僧を送る」

      という詩の一節「笠重呉天雪 鞋香楚地花」

      (笠は重し呉天(ごてん)の雪 鞋(あい)

      は香ばし楚地(そぢ)の花」という漢詩が元

      で、「呉天」は呉の地方の空の意。禅語とし

      て良く取り上げられるが、後に謡曲「葛城」

      で、シテの里の女(実は葛城の女神)とワキ

      の山伏が「笠はおもし呉天の雪 靴は香ばし

      楚地の花」と謠うことで人口に膾炙し(観世

      流では「呉天」をまさに「呉山」と謠う)、

      芭蕉も「夜着は重し呉天に雪を見るあらん」

      と詠んでいる。]

野遊   野遊や餘所にも見ゆる頰冠

茶摘   茶畑に葭簀かけたる薄日かな

     ねもごろに一本の茶を摘みにけり

鷄合   鬪鷄の眼つぶれて飼はれけり

     鬪鷄の蹴上げ蹴おろす羽風かな

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