なりひびく鉤 大手拓次
なりひびく鉤
年のわかい蛭のやうに
みづみづとふくらんだ眼から眼へ、
はなやかな隱者の心が點(とも)つてゆき、
わけ知らずの顏の白いけものたち、
お前は幽靈のやうにわたしのまはりに坐(すわ)つてゐる。
そら、海が女のやうに媚びてねむるとき、
絲をはなれて、はればれと鳴る黑い鉤(はり)の音(おと)をきいてごらん、
やはらかい魚はだまつてききとれてゐるだらう。
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なりひびく鉤
年のわかい蛭のやうに
みづみづとふくらんだ眼から眼へ、
はなやかな隱者の心が點(とも)つてゆき、
わけ知らずの顏の白いけものたち、
お前は幽靈のやうにわたしのまはりに坐(すわ)つてゐる。
そら、海が女のやうに媚びてねむるとき、
絲をはなれて、はればれと鳴る黑い鉤(はり)の音(おと)をきいてごらん、
やはらかい魚はだまつてききとれてゐるだらう。