武裝した痙攣 大手拓次
武裝した痙攣
武裝した痙攣がおこる、
ぐわうぜんたる破壞にむかふ努力がうなりごゑをだす。
わたしはたちあがる、生活の顔面へ。
わたしはみづばれになつた足や膝(ひざ)をだしてあるくのだ。
濕氣の膓(はらわた)をひきだす幻想は姦淫されて、のら犬のやうに死んでゐる。
けれどそんなことは意としない。
くさつた鐵の壁は、わたしのうなりごゑをきいてしかみづらをしてゐる。
それは大きな象をうむ陣痛だ。
ぢつと旋行する凝視のクラリオネツトが鳴ると、
だんだんに夜(よる)がしらみががつてゆく。
[やぶちゃん注:下線「しかみづら」は底本では傍点「ヽ」。「しかみづら」は無論、「顰み面」で、「顰(しか)めっ面」に同じい。]