だれが自然への愛を妨げたか 萩原朔太郎
●だれが自然への愛を妨げたか
學校に於て、私は植物學を學んだ。それから尚、動物學と鑛物學の初歩を學んだ。そして一切の「自然」が、ただその屬種を分類するところの、煩瑣な記憶力への公式であり、尚且つ試驗のために課せられてる、厭な陰鬱の現象にすぎないことを、しみじみ深く教へられた。それからして私は、ずつと今日に至るまで、すつかり自然への愛を無くしてしまつた。
[やぶちゃん注:昭和四(一九二九)年第一書房刊のアフォリズム集「虚妄の正義」の「社会と文明」の一章。]

