一言芳談 一三一
一三一
法然上人云、一丈の堀をこえんと思はん人は、一丈五尺をこえんと、はげむべきなり。往生を期(ご)せん人は、決定の信をとりて、しかも、あひはげむなり。
〇一丈の堀、一念十念むなしからずと安心決定(あんじんけつじやう)せる人も、心口(しんく)に油斷なく多念をはげむべし。二間の堀をこゆるに、二間とおもひてゆるくとべば堀の中程に落つるなり。
[やぶちゃん注:
Ⅱの大橋氏注に、この法語は「法然上人行状絵図」の第二十一、「和語燈録」の巻五、「東宗要」の巻四にも見える、とある。「東宗要」は良忠が建治二(一二七六)年に著した「浄土宗要集」のこと。「和語燈録」のものは、
又人ごとに、上人つねにの給しは、一丈のほりをこへんとおもはん人は、一丈五尺をこへんとはげむべし。往生を期せん人は、决定の信をとりてあひはげむべき也。ゆるくしてはかなふべからずと。
とする。
……ただ……私はこう、付け加えておこう……
『あるひは(つまづく石でもあれば私はそこでころびたい)』(尾形龜之助「障子のある家」の副題)……
「一丈五尺」一丈は三・〇三メートルで、一丈五尺は四・五四メートル。
「二間」三・六三メートル。]